覆面パトカーでおなじみ!? スズキの高級車「キザシ」はなぜ誕生したのか?

かつてスズキは高級セダンの「キザシ」を販売していましたが、販売台数が少なかったうえに警察車両として導入されたことから、「覆面パトカー」のイメージがあります。しかし本来は並々ならぬ思いでこのクルマは開発されたというのです。一体どんなモデルだったのでしょうか。

キザシを見たら覆面パトカーだと思え!?

 2021年2月24日、スズキの経営を40年以上指揮してきた鈴木修氏の会長退任が発表されました。徹底した質素倹約はライバルメーカーも驚くほどだといいますが、スズキは時々その鬱憤を晴らすようなモデルを登場させました。

 本気の軽FRオープンスポーツとして開発された「カプチーノ(1991年)」、軽自動車の延長からのイメージを一掃させた「2代目スイフト(2004年)」などがありますが、今回紹介するのは2009年に登場した「キザシ」です。

スズキの高級セダン「キザシ」
スズキの高級セダン「キザシ」

 キザシはスズキのフラッグシップとなるDセグメントセダンとして颯爽と登場。

 メディアではその実力を高く評価しましたが、「スズキ=小さいクルマ」というイメージが定着していることから人気は今ひとつでした。

 デビュー直後の最新モデルにも関わらず当時からレア車扱いで、輸入車よりも見かけるのは困難。

 2013年に警察の捜査車両として導入されますが、「キザシを見たら警察車両だと思え」といわれるほど、一般のオーナー車両を目にするケースは少ないモデルです。

 そんなことから、キザシは「そういえばあったな」というモデルかもしれませんが、実は開発陣のこのクルマに掛けた想いの強さの大きさは、あまり知られていません。

 筆者(山本シンヤ)はキザシがコンセプトカーだった時代からずっと追いかけていた数少ない一人。今回はキザシが生まれた経緯やコンセプトのついて振り返ってみたいと思います。

 2004年、スズキの実質的な世界戦略車第一号として登場した2代目スイフトは、世界基準の設計・走りを目標に開発されました。

 とくにハンドリングに関しては欧州車を徹底低にベンチマークしており、当時ライバルメーカーのエンジニアは「あのスズキが、あの走りを実現できた理由を知りたい」と語ったほど。モータースポーツ(JWRC)での活躍も話題となりました。

 その後、2007年に登場したコンパクトクロスオーバーの「SX4」は、フィアットとの共同開発モデル(兄弟車はフィアット「セディチ」)であると共に、スズキのWRC参戦マシンとしても話題となりました。

 また、2008年にはスイフトより小型のハッチバック「スプラッシュ」も発売。こちらはオペル向け(アギーラ)にも供給されるなど、攻めの姿勢でした。

 このように短期間で欧州市場での知名度を上げてきたスズキの次なる目標は、「上級セグメントへの参入」でした。

 といってもスズキにとっては未知の領域であり、2007年のフランクフルトショーで「コンセプト・キザシ(ワゴン:2リッターディーゼルターボ+6速MT、4WD)」、2007年の東京モーターショーで「コンセプト・キザシ2(クロスオーバーSUV:3.6リッターV型6気筒+6速AT、4WD)、そして2008年ニューヨークショーで「コンセプト・キザシ3(セダン:3.6リッターV型6気筒+6速AT、4WD)」を出展し、反響をリサーチしながら企画・開発が進めてられていました。

 しかし、リーマンショックで開発凍結の危機に陥りました。経営陣からも「中止」という声もあったといいますが、開発陣は開発の手を止めませんでした。

 その理由は2007年12月に亡くなった小野浩孝専務(当時)の遺志を受け継ぐためです。彼は“攻め”の欧州戦略でスズキのイメージを大きく変えた張本人であり、当時は次期社長候補ともいわれていました。

 フラッグシップとなるキザシは2代目スイフトから始まった一連の欧州でガチンコ勝負ができるモデルの集大成であり、まさに“肝いり”のプロジェクトでした。

 その熱意に経営陣も折れ、「セダンボディでエンジンは2.4リッターガソリン」とバリエーションを絞って開発を続行し、発売まで辿りつきました。

 発表・発売は2009年の東京モーターショーのプレスデーで、事前告知無しのサプライズでした。筆者も取材でスズキブースに行って、「えっ、これは?」と驚いたことをいまでも覚えています。

 企画時のコンセプトモデルからもわかるように、複数のパワートレイン/ボディ形状が計画されていたそうです。

【画像】激レア車!? スズキのフラッグシップセダン「キザシ」とは?(26枚)

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7件のコメント

  1. キザシに今の1400ターボ載せれてたら良い車だったんじゃないかなぁ

    • ずっとおなじこと思ってました~

  2. スズキ・キザシは自分が欲しいと思ったバランスの良いスタイルと良いサイズの車です。
    内装はヨーロッパテイストでシンプルでありながらキッチリ作り込まれ、そこに「安っぽいスズキ」のイメージは無かった。
    ただし、2.3l(だったか?)の中途半端に大きな排気量と、想像以上な車両価格にあの無駄に大きな「S」マークがネックだった。

  3. 海外にあったファブリック仕様 180万位~があればまた違った結果だったのでは。
    あと売れ筋とはいえ、白黒シルバー以外も出した方が良かったのでは。注文色でも良いので
    カタログの見栄えが。

  4. キザシへの判断は留保するが、自ら「数少ない一人」と称する人物の評価に客観性があるか疑問に感じる。
    スズキにとっても、こうした歯の浮くような文章は迷惑ではないか?

  5. ガチクロカンのシエラオーナーなので、キザシの購入は眼中になかったが、セコンドカーとしてなら十分に楽しめる車だった。

  6. スズキが徹底した質素倹約がどーたら鬱憤を晴らすとか言いますが
    それはあくまでも車メーカーとしてでしょ?
    バイクメーカーとしてはそんなイメージは全くありませんが

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