トヨタ製マシンがウーバーイーツを自動配達!? 情報錯綜が続く自動運転業界で何が起きているのか

今後、自動運転技術は本格的な実用段階へと進んでいく

 まず、技術系の観点から業界図式を分類してみます。

 主なプレイヤーになる企業の業態としては、大きく3つ。自動車メーカー(大手自動車部品メーカーを含む)、IT大手、そしてIT系ベンチャーです。

 まず、自動車メーカーでは、いわゆる自動ブレーキや車線逸脱防止など、事故の予防安全の観点からADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム:高度運転支援装置)の機能を段階的にレベルアップさせるという考え方です。

 例としては、スバル・アイサイトや日産・プロパイロットです。

 IT大手は、グーグルやアップル、また中国のバイドゥなどです。自社で自動運転開発プロジェクトの立ち上げ、または関連する企業を子会社化して、公道での走行実験をおこなっています。

 もうひとつが、IT系ベンチャーです。前述のオーロラのように、GAFAM(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト)などに従事した人が独立するケースが目立ちます。

 または、MIT(マサチューセッツ工科大学)や、CMU(カーネギーメロン大学)など、ロボット工学などの分野の研究者が学内ベンチャーを立ち上げる場合もあります。

 別の視点で自動運転業界を分類すると、オーナーカーとサービスカーのふたつが存在します。

 オーナーカーとは、自動車メーカーが生産する乗用車や商用車のことで、一方のサービスカーとはタクシー、バス、トラックなど公共交通や物流向けの車両を指します。

 サービスカー向けの技術開発をベースとしては、IT系ベンチャー企業、サービス事業でのデータ解析・管理を念頭に置くケースが多くあります。

 その筆頭がウーバーでした。2015年にカーネギーメロン大学の研究者を多数引き抜き、ロボットタクシー実用化に向けた技術開発をする、ATG(アドバンスド・テクノロジーズ・グループ)を立ち上げました。

 筆者(桃田健史)はATG創設の間もないころ、アメリカで開催された自動運転関連の国際会議でATG関係者に直接取材したことがありますが「2020年のサービス開始はかなり高い確率で実施できる」と自信のほどを語っていたことを思い出します。

 巨額の投資をおこないATGは1000人規模の組織まで拡大したのですが、2018年にはウーバーがボルボと共同開発していたロボットタクシー実験車が、米アリゾナ州内で歩行者をはねて死亡される重大事故が起こり、自動運転技術の安全性に対する世間の目が厳しくなった印象があります。

 その後、ウーバー創業者が退任し、新しい経営体制へ転換。ATGの在り方についても議論が進んでいたようですが、そうしたなかで新型コロナ禍での本業ライドシェアリング事業での業績悪化。結果的に、ATGの事業をオーロラに売却することになりました。

 このような業界図式を、トヨタ目線で考えて見ますと、トヨタはオーナーカーではADASのトヨタセーフティセンスを拡充。ウーブンプラネット幹部によると「2021年中には(高度な自動運転レベル2相当と思われる)最新型ADASを量産する」といいます。

TRIの自動運転実験車「TRI-P4」
TRIの自動運転実験車「TRI-P4」

 サービスカーについては、運転の主体がクルマ側のシステムが担う、自動運転レベル4相当(実質的なレベル3)を採用するレクサス「LS」ベースの実験車両が東京・お台場地域周辺で公道走行実験を繰り返しています。

 また、レベル4自動運転の公共交通として、「e-Palette」の量産モデルを公開しており、ウーブンシティでの本格的な活用を念頭に置いています。

 一方でトヨタはウーバーに対し2018年に5億ドル(約525億円)を出資。次いで2019年にはトヨタとデンソーなどが10億ドル(約1050億円)を追加で出資しています。

 ウーバーのATG部門がオーロラに売却され、結果的にトヨタとデンソーがオーロラと提携することになっているといえます。

 自動運転の技術は2010年代に一気に進化し、また世界市場での法整備も進み、これから実用段階を迎えようとしています。

 そうしたなかで投資案件という視点も含めて、自動車メーカー、大手IT、各種ベンチャーとの間で、新たな業界再編が起こるかもしれません。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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