新車の「軽トラ」購入にキャンセル待ち? 未だに人気もなぜホンダは軽トラを生産終了するのか

2021年1月現在、国産メーカーが製造する軽トラックは、スズキ、ダイハツ、ホンダの3社となり、残りのメーカーは主にスズキ・ダイハツからOEM供給を受けて販売しています。そのなかで、ホンダ「アクティ・トラック」は2021年6月に生産終了予定だといいます。なぜ、日本のさまざまな仕事に無くてはならない軽トラックが生産終了となるのでしょうか。

ホンダの軽トラ、44年の歴史に幕

 1977年に登場したホンダの軽トラック「アクティ・トラック」は2021年6月で生産終了するといいます。以前には、「2021年4月に生産終了」という話もありましたが、実際に生産終了となるのは2021年6月を予定しているようです。
 
 2021年1月時点ではアクティ・トラックはまだ入手可能なのでしょうか。

「アクティ」44年の歴史は市場縮小や法規制などにより幕を下ろす。
「アクティ」44年の歴史は市場縮小や法規制などにより幕を下ろす。

 軽トラックといえば「農業」「漁業」「林業」などの一次産業に欠かせない存在ですが、これら産業の従事者が年々減っており、比例するように軽トラックも販売台数も減少傾向にあります。

 全国軽自動車協会連合会によると、軽トラックの販売台数のピークは1988年の43万7435台とされており、このピークを境に販売台数は減少していきます。

 以降、10年間隔では1998年に28万6081台、2008年に19万2360台となっており、2018年に18万5735台と10万台後半の数値に留まっています。

 2019年は17万9610台と、軽自動車市場全体の2019年の販売台数が185万5967台であることを考えると、全体の1割以下まで落ち込んでいることが分かります。

 また、軽トラックはあらゆる過酷な状況下でも問題なく使える耐久性を誇ります。そのため、ユーザーとしては長持ちするため大きなメリットとなりますが、販売するメーカーとしては買い替え時期が乗用車よりも長くなる傾向にあることから、新車販売を中心としているメーカー側としては難しい部分でもあるようです。

 現在、軽トラックを生産しているのはスズキ、ダイハツ、ホンダの3社ですが、このうち前述のホンダは前述のとおりアクティ・トラックを生産終了することが決まっています。

 生産終了の要因のひとつに前述の軽トラック市場規模の縮小に加えて、2021年の法改正を挙げています。

 法改正について、国土交通省は次のように説明しています。

「『未就学児及び高齢運転者の交通安全緊急対策』を受け、2019年12月17日に発表を行った高齢運転者等による交通事故の削減に向けた車両安全対策などの措置方針に基づき、乗用車などの衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し、世界に先駆けて新車を対象とした義務付けを行う」

 これにより今後は、日本で生産される新型車については2021年11月から、継続生産車の軽トラックに関しても2027年12月から衝突被害軽減ブレーキ機能の搭載が義務化されます。

 このことから、軽トラックの現在の価格設定では現実的に「衝突被害軽減ブレーキ」の搭載を実現できず、今後順次対応する開発費用をかけても収益を見込めないといった点が軽トラックからの撤退に繋がったといえます。

 従来の用途であった農業などの需要が減少したことに加えて、法改正も重なったことでホンダは軽トラック市場からの撤退を余儀なくされたのです。

 アクティ・トラックの生産終了について、首都圏のホンダ販売店担当者は以下のように話します。

「長年に渡って農業を営むお客さまを中心にご愛顧頂いていたアクティ・トラックは、2021年6月を持って生産終了の運びとなりました。

 衝突被害軽減ブレーキの搭載義務化でコスト的に厳しい状態で、電気自動車などの開発が進む流れもあるなかで、販売台数が少なくなったアクティ系統の軽トラックについては販売終了の決定となったと聞いています。

 長年利用いただいていた農業を営むお客さまからの問い合わせも多く、『マニュアルを運転できない息子のためにAT車を今のうちに買っておきたい』という意見もありました。

 長年販売してきた私共としても、とても残念に思います。現在は最終モデルを販売しており、当法人では『TOWN』『SDX』合わせて7台の在庫が残るのみとなっています」

 また、東北地方の販売店スタッフは次のように話しています。

「現在、アクティ・トラックは在庫分のみの販売となっていますが、当店ではMT車のみしか在庫がなく、AT車は既に完売しています。

 また、MT車においても、すでに法人からの注文枠で埋まっており、一般の購入希望の方にはキャンセル待ちをして頂いている状況です。

 モデル末期とはいえど、商業利用の多い軽トラで順番待ちが起こっているといことが、アクティ・トラックの人気の高さを物語っています」

※ ※ ※

 では、なぜ生産終了の時期が2021年4月あるいは6月という話が出てきたのでしょうか。

 ある地域のホンダ系販売会社の担当者は次のように話しています。

「恐らくですが、元々アクティ・トラックは2021年6月の生産終了と聞いていました。

 そのため、2021年に入ってからは6月までに生産出来る台数を踏まえてオーダーを受けている状況と聞いています。

 しかし、新規オーダー販売もしくは在庫のみ販売というのは、販売会社(販売店)によって異なるため、在庫のみの販売をおこなう販売会社によっては4月時点で販売終了となることが、生産終了と捉えられたのかもしれません」

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