EV市場は中国が覇権を握る? トヨタと異なる中国版テスラ「NIO」の戦略とは

2022年に次世代EVを実用化! でも「NIO」が本当にすごいのは…

 中国では2010年ころより国策として市販車両の電動化を進めてきました。

 その背景には、既存の内燃機関車では日欧米の各メーカーに対する対抗力が弱いことや、急激な経済成長にともなう大気汚染といった中国国内事情があります。

 民族系と呼ばれる中国国内の自動車メーカーが積極的に電動車(EVやPHV)の開発を進める一方で、新興EVメーカーも多く登場しました。2014年に登場したNIOは、そうした新興EVメーカーの急先鋒です。

 創立6年足らずの新興企業ではありますが、2018年にはニューヨーク証券取引所に上場を果たし、2020年11月には時価総額でゼネラルモーターズ(GM)を超すなど、すでにEVメーカーとしてはテスラと双璧をなす規模にまで成長しているといえます。

 2016年に初の市販車となる大型SUVの「ES8」を発表した後、現在では中型SUVの「ES6」や小型SUVの「EC6」などをラインナップし、中国国内で市場を拡大しています。

 そんなNIOが2021年1月9日に開催した「NIO Day」というイベントで、新型セダン「ET7」を発表しました。

 テスラ「モデルS」と真っ向から勝負することになるNIO初となるセダンの登場となり、従来型のEVラインナップとして「70kWh」(航続距離約500km)と「100kWh」(航続距離約700km)の2種類を設定。

 70kWhの車両本体価格は44万8000元(日本円約722万円)のプランと、別途バッテリーの定額利用料を毎月支払う「BaaS」というプランが存在。BaaSプランでは車両本体価格37万8000元(日本円約609万円)+月額980元(日本円約1万5800円)となっています。

 100kWhの車両本体価格は50万6000元(日本円約815万円)のプランと、車両本体価格37万8000元(日本円約609万円)+月額1480元(日本円約2万3850円)のBaaSプランの設定があり、従来型EVのデリバリーは2022年第一四半期を予定しているようです。

 また、発表時には2022年第4四半期をめどに全固体電池搭載モデル(価格未定)を発売することも明らかにされ、この全固体電池車(150kWh)は、1000kmを超す航続距離を実現するといいます。

中国EVメーカーNIOが発表したセダンタイプの新型EV「ET7」。2022年には全固体電池車を投入するという
中国EVメーカーNIOが発表したセダンタイプの新型EV「ET7」。2022年には全固体電池車を投入するという

 実際に全固体電池車が市場に登場するまでにはまだ1年以上ありますが、少なくとも現時点では、NIOが全固体電池のトップランナーに躍り出たように思われます。

 しかし、もっとも注目すべきことは、NIOから発売される予定の全固体電池が、既存のNIOモデルのすべてと互換性があるという点です。

 つまり、既存のNIOユーザーは、新車を購入することなく、最新の全固体電池を手にすることができるのです。

 既存の自動車メーカーの場合、ユーザーが新技術を得るためには、その新技術が搭載された車種を購入するしか方法がありませんでした。

 トヨタの場合、現時点では燃料電池自動車(FCV)は「ミライ」しか販売されていないため、FCVが欲しければミライを購入するしかありません。つまり、「車種ありき」の仕組みです。

 一方のNIOでは、車種にかかわらず、全固体電池による次世代EVという体験を享受できるという点が、これまでの自動車業界の常識とは大きく異なります。

 端的にいえば、「車種ごとの違い」というのがこれまでほど意味を成さなくなるとも考えられます。

 NIOでは、これまでもバッテリー部分のみを交換できる「バッテリースワップ」と呼ばれる仕組みを導入してきました。

 中国国内各地に展開されるバッテリー交換用の施設で、短時間で充電済みバッテリーへと交換する仕組みを整備することで、航続距離の短さというEVの課題をカバーしてききました。

 それらの取り組みは、内燃機関車の対抗馬としてではなく、まったく別のものとしてのEVという新境地を切り開くためのものだったといえるでしょう。

※ ※ ※

 筆者(瓜生洋明)は、数年前からNIOに注目し、実際に現地での試乗もおこないました。

 わずかな試乗ではありましたが、クルマそのものの質は決して低くないことを実感しています。

 しかし、本当に驚いたのは、スマートフォンで購入が完結することや、前述のバッテリースワップと呼ばれる仕組みなどを総合した、NIOを通して得られる体験そのものでした。

 全固体電池のように、技術そのものの進化も目覚ましいNIOですが、日本の自動車産業にとって本当に脅威となるのは、「モノ」だけを作っているわけではないという点かもしれません。

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