マシュメロみたいなブガッティ「ボライド」のヘッドライトの秘密とは?

マシュメロみたいなヘッドライトは、ガラス飛散防止のなごり!?

●ブガッティの卓越したデザイン遺産

フロント、サイド、トップ、そしてリアのどの位置から見ても「X」の文字が見えるようにデザインされている
フロント、サイド、トップ、そしてリアのどの位置から見ても「X」の文字が見えるようにデザインされている

「ブガッティにとって重要なのは、お客さまやブガッティ愛好家たちが常に我々に求めてきた、究極の豪華さとユニークさに貢献できる才能の持ち主を多く抱えることです。

 ブガッティのデザインチームは、一人一人がブランドの価値観に沿って豊かな遺産に取り組む、才能に恵まれたカーデザイナーたちが一体化した集団です」と語るのは、デザインディレクターのアヒム・アンシャイトだ。

「ボライドの開発は、過去にリンクしながらイノベーションを導いていくというブガッティの志を示すものであり、ニルスはその中心でした。ニルスは極めて才能あふれるデザイナーで、我々のクリエイティブチームの非常に大切なメンバーであることがすでに証明されています」

 ブガッティのデザイン遺産についてザヨンツはこう語る。「私が小さい頃から、デザインと物の美しさが私の人生を形成してきました。

 ブガッティというブランドの遺産は私にとって失われたものではなく、ブガッティ『タイプ35』や『タイプ57SCアトランティック』といった有名なレーシングカーの歴史から大きなインスピレーションを得ています。

 私たちの全てのクルマにも今回のボライドにも、ブガッティのレース活動の遺産が小さなヒントとともにちりばめられています。今後の特別プロジェクトでも、まさしく比類のないブランドのデザイン・アイデンティティを保っていくことが大事です」

●ブガッティ・ボライド:サーキット志向の現代のサラブレッド

 量産から派生したW16エンジンをパワートレインとし、最大のダウンフォースを得る最小限のボディと組み合わせたサーキット志向のハイパースポーツカー、そんな実験的な研究がブガッティ・ボライドなのである。0.67kg/psという信じられないほどのパワーウェイトレシオは、1850psのW16エンジンと、わずか1240kgの車両重量によって実現している。

 ボライドで使用される材料と製造プロセスは、ハイパースポーツカーのデザインにおいて現在可能なことと将来可能になることへの大胆なステップを示している。

 世界初のイノベーションはルーフ上のエアインテーク・スクープの変形可能な外板で、気流をアクティブに最適化できる。低速走行時にはスクープの表面は滑らかなままだが、高速時には泡のように表面が膨らむことでスクープの空気抵抗を10%低減し、揚力を17%減少させるのである。車高は歴史的なブガッティ・タイプ35と同じ、わずか995mmに抑えられていて、全体のプロポーションが空力にもたらす劇的な効果は明らかだろう。

 ボライドの革新的なデザインについて、ザヨンツはさらに語る。

「ボライドのデザイン上の数々の特徴は、機能的であると同時に、スタイルの中心的なテーマとしても重要です。ボライドの外観は航空史における、いわゆるXプレーン(アメリカの実験機シリーズ)を想起させるもので、どの角度から見てもXの字が見えるようになっています。

 これはまたブガッティのサーキット育ちの歴史を思い起こさせ、フロントにあるXの字は、歴史的なレーシングカーが事故の際にガラスの散乱を防ぐためヘッドライトに貼っていたテープの「X」を表しています。しかしこれらのテーマは一貫していて、ボライドの全体のダイナミクスとパフォーマンスに貢献し、他の追随を許さないものとしているのです」

 ブガッティのチームは駆動系の周りにカーボン製の軽量モノコックを開発し、それと結合した一体型フロントエンドも高強度のカーボンファイバー製としている。空力的に十分に効果的なアンダーボディやモノコックも同じカーボンファイバーを使っており、単繊維引張強度は1平方mmあたり6750ニュートン、単繊維剛性は1平方mmあたり3万5000ニュートンを誇る。これは、航空宇宙産業でしか到達したことのない数値だ。

 水冷式インタークーラーのかわりに、ボライドは冷却スプレー付き空冷インタークーラーを採用し、サーキットで最適なパフォーマンスを実現。フロントアクスルの前にふたつのウォータークーラーを配置することで冷却システムをより効果的にしているのは、F1ではおなじみの手法だ。

 高性能なセラミック製レーシングブレーキシステムには新開発の「ハイブリッド・カーボンチタン・ターボファン・ラジアルコンプレッサー」が組み合わされて、熱換気と冷却を効果的におこなうようになっている。

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