ニュル24時間で最高速282km/hをマーク! 密着「グリッケンハウス004C」の長い1日

映画監督で脚本家、映画プロデューサーにしてカーコレクターである、ジェームズ・グリッケンハウス氏が率いるチーム「スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス」の「グリッケンハウス004C」がニュルブルクリンク24時間レースに参戦。当日のインサイドストーリーをお届けしよう。

グリッケンハウス、ニュル24時間で雨の洗礼を受ける

 2020年「第48回ニュルブルクリンク24時間耐久レース」で、チーム「スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス」の「グリッケンハウス004C」が総合14位でチェッカーを受けた。

 グリッケンハウス氏と彼の率いるチームにとってもっとも主要な目標である「最新のGT3マシン、グリッケンハウス004Cでニュル24時間レースに参加し完走する」という成功は、ひとまず達成することができた。

 コロナ・パンデミックの影響で今回のレースへ向けて予定していたテスト・スケジュールがまったく立たなかったということを踏まえた上で、約100台参戦したレースで14位という結果は、チームの全員が納得できるものであった。

●雨のニュルの難しさ

シュバルベンシュバンツの小カルーセルから飛び出す「004C」。後部に取り付けられたナンバープレートは開発車両用のもの。「004C」はレースカーであると同時にロードカーの「004S」の公式開発車両でもあるのでニューヨーク州公認の開発車両用のナンバープレートが付けられている
シュバルベンシュバンツの小カルーセルから飛び出す「004C」。後部に取り付けられたナンバープレートは開発車両用のもの。「004C」はレースカーであると同時にロードカーの「004S」の公式開発車両でもあるのでニューヨーク州公認の開発車両用のナンバープレートが付けられている

 レースの前日まで晴天が続いていたのだが、予選レースがおこなわれた木曜日には、重たい雲がニュルの空を覆い、雨が降ったりやんだりを繰り返すようになった。パドックでは誰もが本戦は雨になるだろうと予想していたほどだ。

 その予想は的中。9月の雨のニュルは真冬のような寒さで、冷え切った雨が容赦なく頬や手の感覚を奪っていく。ただし、水煙を上げながら疾走するGT3マシンは本当に美しいので、それを観ると少しだけ寒さを忘れることができる。

 コロナ・パンデミックの影響もあり、グリッケンハウス氏の生まれたばかりの「004C」は雨天でのテストをする機会が与えられなかった。

 雨での走行データがまったくない中で、雨の予選レースの最中にできる限りを尽くすしかない。ピットではエンジニアとメカニックがセッティングに集中していた。

 他車のラップタイムと比較し、ドライバーの意見を聞き、何度もマシンをピットへ戻しウエットのセッティングを続ける。雨脚は常に一定ではなく、路面はラップごとに変常に化し続け、それはまさに手探りのような状態であった。

 ひと昔前の24時間耐久レースであったなら、本戦のレースをしながらピット作業中になんとかセッティングの改善が可能だったかもしれない。しかし昨今の24時間耐久レースは「24時間スプリントレース」といった様相で、一分一秒を争うレース運び。よほどのことがない限り、本戦のレースが始まってしまったら一度決めたセッティングを変更する余裕はない。

 そのため、予選のレースを終えた時点で、雨のレースではセッティングとデータが不十分な004Cが優勝争いに絡むことは、かなり難しいであろうということをラップタイムが物語っていた。

 2020年9月26日15時30分、雨が降りしきるなか、ニュル24時間耐久レースが開催された。25kmを超える長いフォーメーションラップを終え、各車一斉にスタート。

 ウエットにも関わらず、グリッケンハウス004Cは徐々にペースを上げていく。途中雨が上がりスリックに履き替えると、さらに期待が膨らむ出来事があった。なんとグリッケンハウス004Cを操るフェリペ・レーザー選手は、ドッティンガー・ホエのストレートで282km/hに達し、このレースの最高速記録を打ち立てたのだ。

【画像】魔物が棲むグリーンヘルを疾走する「グリッケンハウス004C」!(25枚)

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