ニュル24時間で最高速282km/hをマーク! 密着「グリッケンハウス004C」の長い1日

牙をむき始めたニュル! そのときグリッケンハウス004Cが取った策とは?

 ニュルに通い始めると、Eifel Wetter(アイフェル ヴェター)という言葉をよく耳にするようになる。ドイツ語で「アイフェル地方の天気」という意味だが、その心は「どんな天気になっても驚かないよ」というような意味で使われる。

 海上で湿気を帯びた北極からの風がドイツ北部のなだらかな地形を通り、わずかに隆起しているニュルブルグリンク・サーキットが位置するアイフェル地方にぶつかって雨を降らせる。その風の流れがあまりに速いので、次から次へとニュルへ新たな雨雲が運ばれ天気が常に変化する。そのため、天気予報はもとより誰にも正確なニュルの天気を予測できないというわけだ。

 さらに一周25kmを超える広大なサーキットという条件が、事態をいっそう過酷にする。たとえばピットが位置するGPサーキット(南側)では雨が降っていないので、スリックタイヤを装着してピットを出たとしよう。ところがニュルの北側へ行ってみると土砂降りになっているというようなことがよくあり、その場合、残りの約10kmの雨で滑る路面を、スリックタイヤでピットまで戻らなければならないという事態に陥るのだ。そのため雨のニュルではタイヤの選択ミスは、文字どおり致命的というわけである。

●何が起こるかまったくわからないのがニュル24時間耐久レース

水煙をあげながらステファン・ベロフのSを走り抜ける「004C」
水煙をあげながらステファン・ベロフのSを走り抜ける「004C」

 さて、レースに戻ろう。陽が落ちると、ニュルは次第にその牙をむきはじめる。ピットレーンでは小雨が降り始めたころ、ニュルの北の方ではかなり雨脚が早くなっていた。レインにするかスリックで行くべきか、それともミディアムか……。ピットではタイヤを装着し、マシンを送り出すまで議論が交わされる。

 ピットレーン上では、濡れた路面をなんとかスリックタイヤで戻ってきた各チームが、我先にとレイン・タイヤに交換開始。グリッケンハウス004Cがピットへ戻ってきたちょうどその頃から、ピットレーンでも雨が急に激しくなり始めた。

 雨はどんどん激しさを増し、他車の巻き上げる水煙と濡れた路面が鏡のようにヘッドライトの光を反射するため、どのマシンがピットに入ってきたのか目視できなくなるほどであった。

「まるで氷の上を走っているみたいだ!」

 どんどん雨が激しさを増し、各車まったくペースが上がらない。ラップタイムを比較してみるとどのマシンも同じようなタイムで走っているため、チームのレースエンジニアであるペルゴリーニ氏がドライバーに「辛いだろうけど、他のチームも同じラップタイムだからタイムは気にするな、なんとしても生き残れ!」と無線で勇気づける。

 これは路面を覆う雨水の量がタイヤの限界に達している証であり、これ以上レースをしても無意味であるということを示してもいた。

「まるで氷の上を走っているみたいだ!」無線からドライバーの悲鳴が聞こえてくる。

 ピットでは「そろそろ赤旗中断だろう」という声も出始めたとき、トップを走っていた「AMG GT3」を含む数台のマシンが次々とスピンをし大破してしまった。

●真夜中の赤旗中断

 雨はさらに激しさを増し、このまま続けることは危険であるという判断が下り、21時30分を過ぎた時点で赤旗中断。翌日は天気が次第に回復して無事レースが再開され、グリッケンハウス004Cは14位でチェッカーを受けるという結果であった。

 グリッケンハウス氏はこの結果にとても満足していると語る。

「私たちの004Cは、トップのマシンより5hp少ないBOP(バランス・オブ・パフォーマンス)でありながら、ドライではとても高速でした。まだウエット用のセットアップを開発する必要がありますが、ミシュランタイヤはウエットでもとても素晴らしく、来年は優勝を目指してニュルブルクリンク24時間耐久レースを戦う準備が整います」

 2020年度のチーム・スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスのニュルでのレース活動はこれで幕を閉じるが、2021年にはニュルブルクリンク耐久シリーズ(VLN/NLS)で活動を再開し、第49回ニュルブルグリンク24時間レースに参戦する予定だ。

【画像】魔物が棲むグリーンヘルを疾走する「グリッケンハウス004C」!(25枚)

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