走れるミニバン爆誕!? 日産「セレナe-POWER AUTECH スポーツスペック」がスゴかった!

「これがセレナなのか?」 ミニバンらしからぬ走行性能とは

 エクステリアは、AUTECHの顔となるドット柄のフロントグリルを中心に、メタル調フィニッシュがプラスされた専用エアロパーツなどはガソリン車と同じです。

 その一方で、17インチアルミホイールはダークスパッタ処理がおこなわれるe-POWERスポーツスペック専用品。細かい違いですが、外観がより引き締まって見えるでしょう。

日産「セレナ e-POWER AUTECH スポーツスペック」
日産「セレナ e-POWER AUTECH スポーツスペック」

 ただ、ひとつ気になったのは、ガソリン車よりもタイヤとフェンダーのクリアランスが広いことです。もう少し狭いともっとカッコいいと思います。

 インテリアについてはガソリン車との変更はありませんが、今回試乗した車両はこだわりのインテリアを実現する「プレミアムパーソナライゼーションプログラム」から選択可能なタンレザー仕様のコーディネイト。

 このプログラム、お値段的にはなかなかのプライス(約65万円)ですが、バックオーダーを抱えるほどの人気だそうです。

 セレナ e-POWER AUTECH スポーツスペックの走りはどうでしょうか。

 ノーマルのセレナは日常域の扱いやすさや乗り心地を重視しているのはわかりますが、ボディやサスペンション、そしてステアリングなど、走る/曲がる/止まるという部分に頼りなさを感じるのと、“無味無臭”な乗り味など気になることばかりでした。

 しかし、このセレナ e-POWER AUTECH スポーツスペックは、「これがセレナなのか?」と思うくらいの変貌っぷりです。

 具体的には、高速道路ではプロパイロットの制御を変更したかと思うくらいの直進安定性の高さ、ワインディングでは機敏ではないが操作に対して素直な応答性とクルマの動きに攻めたくなるくらいの安心感を持ったハンドリングが味わえます。

 街中ではノーマルよりわずかに硬めながらスッキリした足の動きと無駄な動きが抑えることでむしろノーマルよりも快適に感じる乗り心地の良さなど、バランスよくレベルアップされているのです。

 そういう意味では、スポーツスペックというよりも、「ツーリングスペック」もしくは「ハイパフォーマンススペック」のほうがふさわしいかもしれません。

 この辺りはノーマルの良し悪しをもっともよく知り、最小限の変更で最大限の効果を生むオーテックの「匠の技」が光っているといえます。

 パワートレインは、ノーマルモードのゼロ発進時のスッと前に出る感覚や高速道路などでの追い越し時の余裕などは、たとえるならば眠いパワートレインがシャキッと目覚めた感じです。

 それもスロットル早開きのような演出的なものではなく車速の伸びや加速Gが長く続くので、一般道はもちろん高速道路でも余裕が増すのが嬉しいところ。

 一方、Sモードはワインディングではワンペダルドライブでリズミカルに走れて楽しいのですが、AUTECHのキャラクターを考えると少々機敏すぎるかなとも感じました。ここはちょっとNISMOが顔を出てしまったようです。

 また、ノーマルより静粛性が高いように感じましたが、これはアクセル開度が減ったこととオプションの吸遮音機能付フロアマットが効いていると思います。

※ ※ ※

 セレナ e-POWER AUTECH スポーツスペックは、国産ミドルクラスミニバンで最良なのはもちろん、欧州のミニバンと比べても良いと感じる一台で、思わず「乗り味を語りたくなる」ミニバンだと思いました。

 個人的には走る場所を選ばない「ミニバンのGT」と呼びたいです。

 ちなみに、スポーツスペックではないセレナ e-POWER AUTECHと比べると、価格アップは約28万円の419万2100円。この値段であの走りが味わえるのなら、選ばない理由はないでしょう。

 ただ、ひとつ厳しいことをいわせてもらうと、「これがノーマルであってほしい!」ということです。

 次期セレナの開発チームは、まずはセレナ e-POWER AUTECH スポーツスペックをベンチマークにして、それを超える気持ちで作り込んでいってほしいと思います。

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【画像】オーラが違う! 走り系の「セレナe-POWER AUTECH スポーツスペック」(36枚)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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