「もうリストラしない」 加藤CEOが描く三菱自動車復活への将来像とは

加藤CEO「モータースポーツは三菱自動車の原点」

国沢:残念ながら日本は平均年収で欧米に引き離されASEANに追いつかれています。中東や中南米だけでなく日本でもエクスパンダーを売るつもりはないんでしょうか。

加藤:十分可能性はあると考えています。ただエクスパンダーの現行モデルは、いまのままだと規制対応が難しい。手直しを必要とします。日本で売ろうとすれば高価になってしまう。

 一方で国内の元気を出すため、お手頃な価格で魅力のあるクルマが必要だと考えます。社内でも慎重論は多いですけれど、そういったクルマを作っていくのは私の重要な仕事です。

国沢:もし三菱自動車がASEANで新型車を独自開発出来るのなら、エクスパンダーのようなヒット車を作って世界に出ていくことも出来るということでしょうか。それが出来たら面白いです。

加藤:先ほどお答えしたように、これ以上のリストラは考えていません。なんとか踏ん張り、人や開発のリソースと国内とASEANに集中し、収益を挙げられるようにしていきます。そしてASEANベースに事業を拡大したいと思っています。

新型車「エクリプスクロスPHEV」の前に立つ国沢光宏氏(写真左)と三菱自動車 加藤隆雄取締役 代表執行役CEO
新型車「エクリプスクロスPHEV」の前に立つ国沢光宏氏(写真左)と三菱自動車 加藤隆雄取締役 代表執行役CEO

国沢:とはいえクルマ作りは時間がかかります。すぐ効果を出すモータースポーツとか考えていないんでしょうか? アジアンクロスカントリーなどあまりお金が掛からず、それでいて元気を出せるジャンルだと思います。三菱自動車が変わった感だって大きい。

加藤:そういう手もあると考えています。じつは数日前に増岡さん(パリダカで大活躍した三菱自動車のベテラン社員ドライバー)とジックリ話をしたんです。アジアンクロスカントリーも話題にあがりました。

 う~ん! アジアンクロスカントリーは検討してみる価値があると思っています、という答えでいかがでしょうか。

国沢:失礼ながら日本は今期も赤字だと思います。けれど昨年はタイだけで600億円の利益を上げている。インドネシアも好調です。ASEANの販売促進のためにも、ASEANで挙げた利益をASEANで使うのは社会的にも素晴らしいと思います。

加藤:インドネシアには、ラリードライバーの知り合いがいます。「ミラージュ」をパワーアップしたモデルとか作ったらいいね、という声も出ているんです。

 最近パリダカで勝って興奮していた若い頃の会社を思い起こすんです。数日前も増岡さんの隣に乗って感動したし、ランサーエボリューションVIIIに乗って楽しかった。やはりモータースポーツは元気が出る。三菱自動車の原点のように思います。

国沢:加藤さんの話を聞いていると、久々に往年の三菱自動車の人だと感じます。増岡さんのような経験を持つドライバーは世界的に見ても珍しい。そんな人を起用出来るのは無形の財産だと思います。モータースポーツは即効性のある起爆剤になるでしょう。

 最後に加藤さんのご趣味を教えてください。それとクルマはなにをお持ちでしょうか。

加藤:そうですね~。いまはゴルフくらいです。以前は子供達とキャンプにいったり釣りをしたりしたんですが、最近時間が取れなくなりました。引退したらノンビリ釣りなんかしたいと思います。クルマは「アウトランダーPHEV」と「eKクロス」です。岡崎だとクルマが無ければどこにもいけませんから。

※ ※ ※

 荒波のまっただなかで社長に突如就任したばかりということもあり、やるべきことが多いんだと思います。趣味の質問をした際「そんなこと考えもしなかった」というオーラを感じましたね。

 全般的な印象ですが、インタビューする前と後で三菱自動車に対する期待度は大きく変わりました。いままでとまったく違います。ただ状況を考えれば時間との勝負。いろんな意味で打つ手は急がないといけないかもしれません。

●三菱自動車 加藤隆雄取締役 代表執行役CEO 経歴

・1984年4月 三菱自動車入社

・2002年4月 乗用車生産統括本部 乗用車生産本部ボデー生産技術部マネージャー

・2003年4月 名古屋製作所工作部ボデー課 課長

・2007年4月 名古屋製作所工作部 次長

・2008年8月 名古屋製作所工作部 エキスパート

・2009年4月 ロシア組立事業推進室 エキスパート

・2010年4月 ロシア組立事業推進室 上級エキスパート

・2010年5月 PCMA RUS 出向

・2014年4月 名古屋製作所 副所長

・2015年4月 PT Mitsubishi Motors Krama Yudha Indonesia 取締役社長

・2019年6月 取締役 代表執行役CEO(現在に至る)

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Writer: 国沢光宏

Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。

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3件のコメント

  1. 武士は食わねど高楊枝?自動車市場を少し深く掘れば分かることをモータージャーナリスト等は現実から逃避してるからね。
    買手の見栄に巧みに入り込んでは、大きな衣に被われた実は小さなエビフライを売ってるのが今の日本の自動車業界でしょうに
    日本の車の剛性配分を診ると、懐石料理なら最初に食前酒だろが、行きなりデザートを出すような間抜けな車ばかりなんだよね
    今更に君ら評論家等に企業視線の車選びを唱えられてもね〜w

    • その通り。
      自動車評論家は無視すれば有る事無い事書かれるから仕事の一貫として当たり障りのない事だけを答える。それさえもしないメーカーは複数あるが。
      ネットでどんな情報も手に入る時代に評論家なんていの一番にリストラすべきだね。総会屋と変わらないし。

  2. クソ評論家が垂れ流す戯れ言、駄文、クソ書き。
    見るだけ時間と通信費金の無駄。

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