ショーン・コネリーが「007」シリーズで愛したボンドカー「DB5」とは?
2020年10月31日、映画俳優であるショーン・コネリー氏が他界した。数々の名作に出演したショーン・コネリー氏だが、なかでも『007シリーズ』の初代ジェームズ・ボンド役がもっとも記憶に残っているのではないだろうか。そこで、ジェームズ・ボンドの愛車として、数多くの『007シリーズ』に登場したアストンマーティン「DB5」のボンドカー仕様を紹介しよう。
ボンドカーは、正真正銘アストンマーティンのワークスカーだった
銀幕には数多くのクルマが登場する。
そして、一世紀を遥かに超える映画の歴史のなかでももっとも存在感の高い自動車といえば、やはり「007」シリーズにおける歴代「ボンドカー」。とりわけ、アストンマーティンの各モデルを挙げることに異論を挟む向きは少ないだろう。
なかでも有名なのは、映画版007史上初めて登場した「ボンドカー」であるアストンマーティン「DB5サルーン」。まずは『007ゴールドフィンガー(1964年)』に、ショーン・コネリー扮する主人公ジェームズ・ボンドの愛車として登場した。
劇中に登場するボンドカーは、アストンマーティン社の旧ニューポート・パグネル工場内スペシャルコーチワーク部門にて特別に改装された文字どおりの「ワークスカー」で、撮影用に3台が製作されたうち、1台は当時最新のDB5が間に合わず、外観がほぼ同一の「DB4シリーズ5ヴァンテージ」がベースとされたといわれる。
この作品でボンドが使用したDB5には機関銃や可変ナンバープレート、原始的なナビシステム、リア防弾装甲、携帯発信器、煙幕/オイル散布装置、助手席射出シートなど、当時としては夢のような秘密兵器で度肝を抜いた。
またDB5ボンドカーは、翌1965年の『007サンダーボール作戦』でも再び銀幕に登場して、大活躍を見せることになった。
さらにアストンマーティンDB5は『007ゴールデン・アイ(1995年)』以降、最新作の『007ノー・タイム・トゥ・ダイ』に至るまで再三登場するなど、007とボンドカーの時代を超えた象徴として君臨している。
こうしたことから、現在もなお「The Most Famous Car in the World(世界一有名なクルマ)」という、栄誉ある称号で呼ばれているのだ。
実際に『ゴールドフィンガー』および『サンダーボール作戦』に出演したDB5、そしてボンドカー仕様に改装されて映画PRのための世界巡回に供されたDB5たちは、現在でも時おり国際オークションに出品されることがあり、その時々に大きな話題を提供する。
今回はいささか旧聞に属するものの、DB5ボンドカーがもっとも近い時期にオークションへと出品された事例、2019年8月のRMサザビーズ「Monteley Auction 2019」のレポートをお届けしたい。
新型コロナウイルス禍以前のオークションゆえに、落札価格は必ずしも現在のマーケット市況を直接反映しているか否かは明言できないのだが、故ショーン・コネリーに捧ぐ意味においても、オークション会場の雰囲気とともにお伝えすることにしよう。
●アストンマーティンに占拠されたモントレー
アメリカ合衆国カリフォルニア州モントレー半島を舞台に、毎年8月の恒例行事となってきた「モントレー・カーウィーク」では、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」や「ザ・クエイル・モータスポーツギャザリング」などのコンクールや、ラグナ・セカ・サーキットでおこなわれる「ロレックス・モータースポーツ・リユニオン」などのレースイベントなどが、長年シンボル的なイベントとして君臨している。
またモントレーやカーメル・バイ・ザ・シー、あるいはパシフィックグローヴなど半島内の街中でも、クラシックカー愛好家たちによる大小のコンクール・デレガンスやミーティングがおこなわれているのも楽しいところだが、この10年ほどで全世界の注目を集めるようになってきたのが、名門オークショネアたちによる大規模オークションの数々である。
ここ数年だけを見ても、ペブルビーチ・コンクールのオフィシャルオークションである「グッディング&カンパニー」社、ザ・クエイルと組んだ「ボナムズ」社など、それぞれ一流コンクール・デレガンスをパートナーとしたオークションが開かれてきた。
そんななか、クラシックカー/コレクターズ・オークションの業界では最大手として君臨する「RMサザビーズ」社は、モントレー市中心街の国際会議場「モントレー・コンファレンスセンター」を会場とした超大規模オークション「Monteley Auction」を3日連続で挙行することが近年の慣例となっているという。
2019年は8月15、16、17日に開催されたのだが、この年「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」に1921年型ベントレーを伴って初チャレンジした「ワクイミュージアム」の一員として帯同していた筆者は、オークション初日に当たる15日に、モントレー市内の競売会場を訪ねるチャンスを得た。
そしてこの「Monteley Auction」会場において、筆者はホンモノのDB5ボンドカーが衆人環視のもとに落札されるさまを、わずか数メートル先で見届けることになったのだ。
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