ショーン・コネリーが「007」シリーズで愛したボンドカー「DB5」とは?

果たして、本物のボンドカー「DB5」はいくらで落札されたのか!?

 アストンマーティン社とRMサザビーズ社とのコラボレーション企画「An Evening with ASTON MARTIN(アストンマーティンとの夕べ)」と銘打たれたこの夜。会場のモントレー・コンファレンスセンター前には、競売への出品を待つ珠玉のクラシック・アストンたちがギッシリと整列。周辺を埋め尽くす観光客たちが、歓声を上げつつカメラやスマートフォンを向けて写真を撮っていた。

●まさに夢のような落札劇

DB5ボンドカーの入場が告げられると、競売会場の雰囲気は一変した(撮影:武田公実)
DB5ボンドカーの入場が告げられると、競売会場の雰囲気は一変した(撮影:武田公実)

 筆者たちはその群衆をかき分けて、コンファレンスセンターのエントランスホールへと進入。RMサザビーズ社の特設カウンターで手続きを済ませ、入場証となるゴム製のリストバンドを手首に巻いて会場に歩みを進める。

 会場内では、アストンマーティン本社および北米インポーターが招待した優良顧客と思しき紳士・淑女たちが、分厚いオークションカタログを小脇に抱えながら、シャンパン片手に「プレビュー」を見学している真っ最中。

 とくに高額車両へのビッド(入札)が見込まれそうな顧客には、RMサザビーズ社の営業スタッフがかいがいしく同行して、出品車両のセールスポイントを解説していた。

 この屋内「プレビュー」では高価格が見込まれる出品車両たちを、まるでモーターショーや博物館のように美しくディスプレイする一方で、コンファレンスセンター近隣の観光地「フィッシャーマンズワーフ」に面した屋外広場においても、100台ほどをプレビュー展示。双方にミュージアム級の名車たちが数多く用意され、これから競売に向かう愛好家たちの高揚感を煽っていた。

 かくして競売のスタート時刻を迎え、プレビュー会場に隣接するホールに移動すると、早くも独特の緊張感が張り詰めているのが分かる。アストンマーティン限定のこの夜、まずは1990-2000年代のモデルたちが、競売人のリズミカルな口上に合わせて次々と落札されてゆく。

 そののち名車「DB5」をベースに、英国のコーチビルダー「ラドフォード」がアストンマーティン社と協業で12台のみ製作したワゴン「シューティングブレーク」が176万5000ドル(邦貨換算で約1億9000万円)で落札されると、会場はにわかに活気づく。

 オークション司会者が声のトーンを高め、ついにDB5ボンドカーの入場が告げられると、競売会場の雰囲気は一変した。

 この個体は、映画『007サンダーボール作戦』のPR活動に世界巡回した本物の「ボンドカー」とされ、競売の数か月前から世界中のメディアで取り上げられていた。

 入札が始まると、会場各所に散らばった営業担当者が見込み客に寄り添って入札を促す。また、ステージ上のカウンターに座る電話入札担当の営業担当者たちも続々と札を挙げ、そのたびごとに巨大ビジョンの価格表示がぐんぐんと上昇してゆく。

 そして競売がクライマックスに達し、手数料込みで638万5000ドル、当時の邦貨換算で約6億7000万円という恐るべき高価格で落札された際には、会場内はどよめきと拍手が巻き起こったのである。

 このドラマのような落札劇の一方で、この日の最高価格が予想されていた1950年代のレーシングスポーツ「DB3S」は750万ドル(約7億9000万円)、あるいはかつて日本で10数年間を過ごし、現在話題のTVドラマにも主演している某スター俳優が愛用していたというヒストリーを持つ「DB4GT」は250万ドル(約2億6000万円)まで入札されるも、いずれもオーナーとRMサザビーズ社が取り決めた最低落札価格には及ばず、不成立に終わった。

 しかし、DB5ボンドカーの大取り引きの余韻は消えることなく、オークション会場は終始大盛り上がり。こうして、夢のような夜は更けていったのである。

【画像】ボンドカー仕様のアストンマーティン「DB5」とは(26枚)

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