車はアップデートする時代!? マツダ「スカイアクティブX」が進化したワケ
マツダは、スカイアクティブXのバージョンアップを図りました。従来型とはどのような部分が異なっているのでしょうか。
マツダのスカイアクティブXが超絶進化!? 何が変わったのか。
長期的に見るとピュアEVの時代がやってくるのは間違いありませんが、現時点では技術的な課題(とくにバッテリーの性能)も多いことから、直近で「オール電化」にはならず、ハイブリッドやPHEVといった「内燃機関+電動化技術」が主流となると筆者(山本シンヤ)は考えています。
そのため、マツダは内燃機関が搭載される限りは今後も進化させていく必要があると考えています。
そんな内燃機関の究極の姿といわれるのが、ガソリンをディーゼルのように自己着火させる究極の燃焼方式を用いた「ガソリンの圧縮着火エンジン」です。
これまで主要な自動車メーカーが研究・開発をおこなってきましたが、マツダが独自の「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」を用いて世界で初めて実用化に成功したのが「スカイアクティブX」です。
このスカイアクティブXが市場導入されてから約1年が経過しました。「マツダ3」を皮切りにクロスオーバーSUVの「CX-30」にも搭載。
筆者は全域でドーピング感のない力強さとフラットな特性なのに加えて、雑味のないサウンドや抵抗感が少なそうな摺動部、滑らかに吹け上がる回転フィールなど、高度にバランス取りされた“高精度エンジン”のような繊細さも備えられ、個人的にはマツダが目指す「滑らかな走り」に一番マッチしたエンジンだと思っています。
例えるならば「究極の実用エンジン」といってもいいでしょう。
ただ、ガソリン車+70万、ディーゼル車+40万というプライスに見合う魅力があるかどうかというと決定打に欠けるのも事実です。
例えば、180馬力/224Nmのスペックに対してもう少し余裕は欲しいし、走りと燃費のトレードオフが少ないがハイブリッドに対抗できるほどの優位性を感じにくいなどが挙げられます。
ちなみに筆者はデビュー時のインプレッションの結論でこう記していました。
「現時点の結論をいうと、スカイアクティブXは磨き甲斐のある原石だと思っています。つまり、スカイアクティブXは『夢のエンジン』ではなく『夢の扉を開けたエンジン』だと考えています」という風に記していました。
かつてロータリーエンジンがそうだったように、今後の進化・熟成によって『ハイブリッド/EVよりも明らかにいいでしょ?』といわせてほしい。
個人的には扱いやすく、動的質感が高く、官能性を備えるエンジンなので、スポーツカー向けユニットにも発展させてもいいと思っています」
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そんななか、スカイアクティブXのアップデートがおこなわれました。SPCCIは生まれたての技術であり、進化の余地はたくさんあるということでしょう。
では、何が変わったのでしょうか。実はこのバージョンアップは「SPIRIT 1.1」と命名(整数はハード、小数点以下はソフトウェアの変更を意味)されています。
これまでもマツダは時期に囚われず、「良いモノが出来上がったらすぐに提供」という考えの元に積極的な改良をおこなっています。
筆者はその考えは賛成ですが、変更したことが上手く伝わっていないことを以前から指摘していました。これならばPC/スマホのOSバージョンアップと似ているので解りやすいかもしれません
今回は1.1なのでハード変更はなく、制御つまりソフトウェア変更のみです。変更項目は大きく分けると3つで、ひとつ目は「燃焼制御の緻密化」で、混合気状態の予測モデル精度とくにEGRモデル精度を高めることで多くの新気導入が可能になり大幅なトルクアップを実現(180馬力/224Nm→190馬力/240Nm)しました。
ふたつ目は「エアサプライの過給開始時期の変更」で、アクセルを踏んだときの瞬発力が引き上げられています。
そしてみっつ目は「M-Hybridによるトルク制御の緻密化」で、トルク変動をISGのトルクコントロールで減衰させることで加速の繋がりがより滑らかになっています。
正式発表は2021年初頭を予定していますが、今回一足お先にマツダの美祢試験場(サーキットコース/ワインディングコース)で現行モデルとSPIRIT1.1の乗り比べをおこなってきたので報告したいと思います。
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