「タイヤに窒素ガス」を入れるサービスにメリットはある? その始まりとは
レースで窒素ガスが使われだしたのは1980年代?
窒素ガスを充填することは、なぜふつうの空気を入れるよりも良いのだろうか。そもそも空気も約80%が窒素なので、窒素100%のガスを入れるメリットがないように感じてしまう。
窒素ガスは、製造工程でほとんどの水分が除去される。ここが大きなポイントだ。
水分が除去されることで、気温が暑くなったり寒くなったり、また走行したことでタイヤが熱くなっても、水分が含まれていないことで、それらに左右されることなく常に一定の圧力が保たれるのだ。
カー用品店などでタイヤに窒素ガスを充てんするサービスが始まる前から、一部の業界ですでに使われていた。それはモータースポーツだ。
日産のモータースポーツ活動を担うNISMOによると「レースではタイヤを交換する時に使うインパクトレンチや、レースカーを素早くリフトアップするエアジャッキなどに窒素ガスを使っています。高圧で力が必要であることと、安価であることが窒素ガスのメリットです。
もちろん、タイヤの充てんにも使っています。窒素ガスをタイヤに使い始めたのは、いつ頃かはハッキリしていませんが、エアジャッキがレースで使われ始めたのが1983年あたりからなので、おそらくその年代からだと思います」とのことだった。
では、タイヤへの窒素ガスの充てんは、実際のレースシーンではどんなメリットがあるのだろうか。
実際にワンメイクレースに参戦する人に話を聞いてみたところ「タイヤの空気圧はシビアで、やはりタイムに差が出てくるので、窒素ガスを充てんして使っています。エア抜けしにくいと感じます。また熱ダレに強い、という話は聞きますが、あまり感じたことはありません。でも、空気圧が安定しているというのは間違いないですね」とコメントする。
いまではカー用品店やタイヤ販売店、ガソリンスタンドなどでも窒素ガスを充てんするサービスが広がっている。実際にカー用品店で聞いてみた。
「ウチの店では、タイヤ購入のお客様に無料で充てんしています。窒素ガスだとエア抜けしにくいことや、タイヤが減りにくいといった利点を説明しています。充てん後1年間は、補充無料です。有料での充てんもおこなっており、その場合1本540円で提供しております」(東京23区大手カー用品店ピット担当)
「タイヤを購入していただいたお客様に無料で充てんしています。充てん後は、そのお買い上げいただいたタイヤを装着している限り、補充は無料です。有料での充てんも承っています」(東京23区タイヤメーカー系店舗売り場担当)
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ここまでメリットばかり取り上げたが、実際に普段クルマを使う上で役に立つのだろうか。
先ほど紹介したワンメイクレースに参戦している人に、普段から愛車にも窒素ガスを充てんして使っているのか、聞いたところ「(窒素ガスを)充てんしてくれる所が限られているので、普段はふつうの空気を入れて使っています。それにエアが抜けづらいといっても、ほったらかしというのは信条的にイヤ。なので、普段は1か月に一度は空気圧をチェックしています」という。
カー用品店でも「窒素ガスを入れるとエア抜けがしにくいからといって、メンテナンスフリーではなく、徐々に抜けていきます。ですので、まったく空気圧を点検しなくても良いということではないと説明しています」とのことだった。
窒素ガス充てんのメリットは確かにあるが、充てんできる場所が限られてくる。日ごろからサーキット走行を楽しむ人以外は、メリットはそんなに多くないようだ。
いつも窒素を入れるタイヤ屋さんはこだわりがあって色々試し、ウガイと称して窒素を入れて抜いてを3回繰り返し、残留酸素濃度を0.3%以下にします。そこまですることで初めて劇的に効果が感じられます、と。確かに違うよ!