シビック/CR-Vはホンダ独自技術で存続なるか? GMとの協業でホンダの車作りはどう変わる
ホンダとゼネラルモータース(GM)は、北米四輪事業での幅広い分野での協業開始の検討を始める覚書を締結したと、2020年9月3日に発表しました。これまで独自技術を生かした車種開発が特徴的だったホンダですが、GMとの協業でクルマ作りはどのように変わるのでしょうか。
衝撃的なホンダとGMの協業検討開始 期待される成果は?
ホンダと米ゼネラルモーターズ(GM)は2020年9月3日、「北米四輪事業で、幅広い協業の検討を始める覚書を締結した」と発表しました。いわゆる、アライアンスという考え方です。
その内容は、複数のセグメントで車両プラットフォームとパワートレインの共有や、コネクティッドや自動運転など先進技術領域での共同研究開発など、クルマ作りの根幹に関わる大胆なものです。今後登場する両社の新型モデルは、どのようになっていくのでしょうか。
今回の発表を受け、ホンダというブランドの独創性について、つまりホンダの未来について疑問や不安を感じる人がいると思います。
それは、北米でのアメリカ人やカナダ人だけではなく、日本で今後どのような影響が及ぶのか、日本人ユーザーにとっても気になるところです。
今回の発表の背景にはいったい何があるのでしょうか。順を追って見ていきたいと思います。
まずは、タイミングです。アメリカでは、新型コロナウイルス感染拡大の第二波が到来しており、一時は再開していた経済活動が再び休止せざるを得ない州や地域も出てきました。
こうしたなか、ウィズコロナ、そしてアフターコロナの時代を見据えてのアライアンスなのでしょうか。
基本的には、そうは思えません。
なぜならば、ホンダは2019年から研究所(本田技術研究所)の体制を大幅に見直し、また2020年4月からはそれまでの二輪事業に次いで四輪事業でも本社(本田技研工業)と研究所との密な関係へと転換してきたからです。
ホンダの八郷隆弘社長は今後の事業方針について「コスト見直しを強化し、選択と集中を加速させる」と発言してきました。
ホンダは、商品企画・マーケティング・営業などを本社がおこない、研究開発は実質的な子会社である研究所に委託するという、自動車メーカーとしてはほかに類のない独自形式を続けてきました。
これが、創業者・本田宗一郎氏の「技術はひとのために」というモノづくりに対する基本的な考え方です。
しかし、いわゆるCASEと呼ばれる、通信によるコネクティビティ、自動運転、シェアリングなど新サービス、そして電動化など、自動車を取り巻く環境が近年大きく変化するなか、従来のホンダ方式のモノづくりにおける高コスト体質を根本的に見直す必要が出てきたのです。
そうしたなかで、他社との連携についてもホンダ社内で多様な議論が進み、これまで燃料電池車など電動化技術の共同開発を進めるなかでGMとのアライアンス強化という結論に達したのだと思います。今回の発表では「過去のEV協業などの成功に基づいて構築」という一文があります。
もう一点は、ホンダ関連企業の部品メーカー、ケーヒン、ショーワ、日進工業、さらに日立オートモーティブシステムズの経営統合です。2020年9月1日には、そのプロセスの一部としてケーヒンの完全子会社化のための公開買付けを始めています。
この新会社は、電動化や自動運転技術の分野で、GM側との技術連携をすることになる可能性が高く、こうした法務的な手続きの時期も、GMとの広域アライアンス発表のタイミングに影響を与えたといえると思います。
GMは現在利益率の高いピックアップ系(とその派生SUV)とCASE対策にしか興味がありませんからね。
今回の協業は、それ以外の乗用車系SUV(CUV)の設計をホンダに委託したいということではないでしょうか。セダン市場は既に撤退を表明していますし。
また製造の委託の話も入ってくると、GMとしては労組関係の厳しいデトロイトや韓国工場の封鎖をより推し進めることができる可能性もありますね。
GMは既に欧州市場は事実上撤退していますし、南米も縮小傾向、中国は特殊な市場で現地パートナーとの関係もあるので今回「北米での」という括りなのかと思います。