フェラーリオークション戦線異常あり! コロナ禍で乱高下、予測不能!!

オンラインだと落札価格は伸びないのか?

 1966年以降の275GTBは、ノーズ先端がより長く延ばされるとともに、リアウインドウも拡大。トランスアクスルのプロペラシャフトがトルクチューブ化されるなど大規模なブラッシュアップが施された。

 そして翌1967年には、フェラーリ製ストラダーレとして初めて、バンクあたりDOHCとドライサンプ潤滑が採用されて300psをマークした。そして新たに4本のカムシャフトを持つことから「275GTB/4」と呼ばれることになった。

●1967 フェラーリ「275 GTB/4 byスカリエッティ」

フェラーリ「275 GTB/4 byスカリエッティ」は、「275GTB」より相場価格は5割増しといわれる(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
フェラーリ「275 GTB/4 byスカリエッティ」は、「275GTB」より相場価格は5割増しといわれる(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 この275GTB/4、生産台数は330台と275GTBよりも少ないせいか、あるいはスタイリッシュなエクステリアと4カムエンジンの魅力か、国際クラシックカーマーケットにおける人気は常に2カム275GTBを上回り、その相場価格は5割増し以上といわれている。近年のオークション実績では3億円前後の落札事例もいくつか見られたようだ。

 しかし、2020年7月に同じRMサザビーズが開催した「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」では、2カムながら概ね4カムモデルに近い金額で取り引きされる、総アルミボディの1966年型ロングノーズ275GTBが、170−190万ユーロのエスティメートを大幅に下回る、143万ユーロ(邦貨換算約1億7700万円)に終わってしまったことから、新型コロナ禍の中で275GTB人気にも翳りが出てきたのではとする見方もあった。

 ところがその直後、「グッディング&カンパニー」社が8月7日の締め切りでおこなった「GEARED ONLINE」オークションでは、同じ1966年型の275GTBロングノーズが308万ドル(邦貨換算約3億2700万円)という驚異的な価格で落札されるなど、新型コロナ禍真っただなかにある現在のマーケットの混乱ぶりを象徴する結果を示してきているのだ。

 そんな状況のもと、今回RMサザビーズ社が「SHIFT MONTEREY」に際して275GTB/4に設定したエスティメートは、250万ドル−275万ドルという現況を鑑みれば至極妥当な数字だった。

 ところが、競売締め切りの8月14日午後を迎えてもビッドは振わず、結局230万ドル(邦貨換算約2億4500万円)まで上がったところで入札は終了。今後はオークションハウス側で購入希望者と個別に商談を継続する「Still For Sale」となってしまった。

●1966 フェラーリ「275 GTS byピニンファリーナ」

ピニンファリーナがデザインとコーチワークの双方を完全受託するゴージャス系モデル、フェラーリ「275 GTS byピニンファリーナ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
ピニンファリーナがデザインとコーチワークの双方を完全受託するゴージャス系モデル、フェラーリ「275 GTS byピニンファリーナ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 1990年代までのフェラーリは、トリノのピニンファリーナでデザインワークを担当し、モデナのスカリエッティがボディ製作を引き受けるコンペティション指向の高いモデルと、ピニンファリーナがデザインとコーチワークの双方を完全受託するゴージャス系モデルの双方が存在したが、1964年に275GTBと時を同じくしてデビューした豪奢なスパイダー「275GTS」は後者にあたる。

 250GTピニンファリーナ製カブリオレの後継にあたるモデルとして開発された275GTSは、エンジンパワーを275GTBから20ps落とした260psとされる一方、より上品で豪華なスパイダーボディと、ボラーニ製ワイヤーホイールが標準で与えられた。

 生産台数は200台と、275GTBおよび275GTB/4を合算した780台よりもかなり少ないのだが、やはりスター的な魅力を発揮するスカリエッティ製ベルリネッタの陰に隠れた存在であったことからか、今回RMサザビーズが設定したエスティメートは、2カム版275GTBよりも若干安めの160万ドル−180万ドルであった。

 こちらも半ば当然のごとく「フェラーリ・クラシケ」認証を得ていることからわかるように、エンジンとトランスミッションはオリジナルのものを維持。オリジナリティの点でも申し分ない。

 また新車としてデリバリーされて以来、54年間で刻んだ走行距離は約2万7500マイルというローマイレージ(低走行車)で、しかも2018年に5万ユーロ(邦貨換算約630万円)を投じて機関部のリペアを施したばかりという。

 こうした好条件にもかかわらず、8月14日午後(現地時刻)に締め切られた競売は、エスティメートには大きく及ばない、140万ドル(邦貨換算約1億4800万円)で流札。こちらも「Still For Sale」となってしまったのだ。

* * *

 本来ならば2020年8月16日に開かれるはずが、来年へと一年順延となってしまった「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」は、90周年を迎えたピニンファリーナがメインフィーチャー・ブランドとされていた。

 予定どおりコンクールが開催され、モントレー・カーウィークが「ピニンファリーナ祭り」にでもなっていれば、あるいは今回のフェラーリ275GTたちにも、もっと高値による落札があったのかもしれないが、結果としてこの「SHIFT MONTEREY」は、現在の国際マーケット市場における予想の難しさを、いまいちど浮き彫りにする結果となったようだ。

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