実はかなりの少数派!? スポーティな国産ディーゼルエンジン車3選
1990年代から2000年代にかけて欧州を中心に普及が加速したのが、ダウンサイジングターボエンジンとディーゼルエンジンです。なかでもディーゼルエンジンはパワフルで、中型車以上のモデルではとくに人気が高まり、スポーティなモデルも存在。そこで、かつて販売された国産スポーティディーゼル車を3車種ピックアップして紹介します。
数少ない国産スポーティディーゼル車を振り返る
ディーゼルエンジンは優れた燃費と大きなトルクが特徴のエンジンで、近年は欧州を中心に爆発的に普及しました。その後は排出ガス規制の強化から一旦は下火になりましたが、現在はクリーン化が進み、ミドルクラス以上のモデルやSUVではディーゼル人気が盛り返しています。
さらにターボディーゼルが一般化した後は高出力化も飛躍的に進み、欧州車ではスポーティなモデルにもディーゼルエンジンを搭載するようになりました。
一方、国産車ではスポーティなディーゼルエンジン車は、これまでも数少ない状況です。
そこで、レアな国産スポーティディーゼル車を3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン280D GT」
1977年に発売された日産5代目「スカイライン」、通称「ジャパン」は、シリーズ初となるガソリンターボエンジン車がラインナップされたことで、大いに話題となります。
さらに、5代目には1980年、2.8リッター直列6気筒の「LD28型」ディーゼルエンジン搭載車が設定され、「280D GT」というグレード名が与えられました。
LD28型エンジンは、直列6気筒エンジンならではのスムーズな回転と静粛性に加え、当時としては高速型のディーゼルとして高く評価され、日本における乗用車用ディーゼルエンジンの草分け的存在です。
エンジンの主要部分はガソリンエンジンの「L型」6気筒をベースしており、過流室式の燃焼方式を採用。しかし、自然吸気のため最高出力は91馬力と、ガソリンの「L20型」に比べスポーティなエンジンとはいえませんでした。
ディーゼルエンジンは、スカイラインのキャラクターにマッチしているとはいえませんでしたが、オイルショックの影響もあり、低燃費なクルマが求められたための搭載だったようです。
なお、6代目スカイラインにもLD28型を搭載した280D GTがラインナップされ、7代目では新世代の「RD28型」直列6気筒ディーゼルエンジン搭載車が設定されましたが、8代目の「R32型」から全車ガソリンエンジンとなり、以降は現在までディーゼルエンジン車は設定されていません。
●いすゞ「117クーペ」
1968年に登場したいすゞ「117クーペ」は、1967年発売のセダン「フローリアン」のコンポーネンツを流用して誕生した高級パーソナルクーペです。
当時としては数少ない1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載。美しいボディスタイルはイタリアのデザインスタジオである「カロッツェリア・ギア」の手によるもので、チーフデザイナーは多くの名車を手掛けたジョルジェット・ジウジアーロです。
内装も台湾楠のウッドパネルを使った上質なもので、ボディの流麗さを損なわないためにジウジアーロ自身がデザインしたといいます。
通常の生産ラインでは対応ができず、多くの製造工程を手作業でおこなっていたことから、初期のモデルはのちに「ハンドメイド」と呼ばれましたが、同時に1970年にはボッシュ製の電子制御インジェクションを日本で初めて搭載するなどの先進性もありました。
その後、117クーペは量産体制が構築され、改良とマイナーチェンジを繰り返し、1977年のマイナーチェンジでは、ヘッドライトが丸型4灯から角型4灯となる大きな変更が加えられました。
そして、1979年には2.2リッター直列4気筒ディーゼルエンジン搭載車が追加。
もともとトラックメーカーでもあるいすゞにとって、ディーゼルエンジンは得意分野であり、燃料価格の高騰もあってか、フローリアンや「ジェミニ」と並んでディーゼルエンジンのフルラインナップ化が図られたということです。
しかし、最高出力はわずか73馬力で、2リッターDOHCガソリンエンジンの135馬力と比べるとかなり劣り、さらに当時のいすゞ製ディーゼルエンジンは静粛性がいまひとつで騒音も大きく、117クーペにふさわしいパワーユニットとはいえませんでした。
1981年に後継車の「ピアッツァ」がデビューしたことで、117クーペの生産は終了。ディーゼルモデルはわずか2年の販売でした。
名車といわれる117クーペですから、いまも比較的現存数も多いと思われますが、さすがにディーゼル車は激レアです。