マクラーレン「GT」は、意外と「積める」&「乗り心地抜群」だった!【スーパーカーでお伊勢参り(前編)】
日本橋からお伊勢参りに向かう紀行文学といえば、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』があるが、スーパーカーで日本橋からお伊勢参りをしたらどうなのか、マクラーレン「GT」で金子浩久氏がカメラマンと2人で現代の弥次喜多よろしく旅にでかけた。今回は、日本橋からスタートする前編をお届けする。
そうだ、旅に出よう! スーパーカーでお伊勢参り
江戸時代の人々もグランドツーリングを楽しんでいたと聞くと驚いてしまう。その代表格が、伊勢神宮を参拝する“お伊勢参り”だった。
現代のような移動の自由も手段もなく、厳格な身分制度があったにもかかわらず、多くの庶民はお伊勢参りを楽しんでいた。
徒歩で向かうわけだから、江戸から伊勢まで順調に進んでも2週間も掛かったらしい。復路にも同じだけ要するし、道中で他の寺社に参拝したりしたら、すぐに往復1か月を優に超えてしまう。大雨で川を越えられなかったり、怪我や体調不良なども起こるかもしれない。長く、予期せぬ出来事に満ちていた。
しかし、しかし、そんなお伊勢参りも、現代ならばクルマを運転して東京から伊勢まで半日足らずで着くことができる。
マクラーレン「GT」は、その名の通りグランドツーリングのために生み出されたニューモデルだ。
これまでのスーパースポーツとは少し方向性を変え、快適性と実用性を併せ持たせているという。
「サーキット走行を楽しめる動力性能を持ちながら、大陸横断できる能力も兼ね備えています」(GTのチーフエンジニア、アダム・トムソン氏)
外観も、これまでのマクラーレン各車とだいぶ違っている。
ヘッドライトやフロントマスクは穏やかな形状となり、ボディサイドは微かな抑揚が付けらながらエアインテイクに収束している。細いクロムメッキに縁取られたサイドウインドウの形状もGTならではのものだ。
そして、GTをGTたらしめているのがリアスタイルだ。ファストバックスタイルを採っているため、大きなリアガラスがテールまで続いていて、エレガントな雰囲気を漂わせている。待望の日本仕様は日本橋の雑踏のなかにあっても異彩を放っていた。
江戸からの起点となるのは日本橋だったので、僕らもそれに倣うことにした。実は筆者は昨年に発表直後のGTを南フランスで試乗している。
南フランスで乗った時に最初に驚かされたのが、荷物積載量の大きさだった。フロントには150リッターの専用トランク、リアには470リッターという広大なトランクスペースが用意されている。
「リアのトランクスペースは中央部分を凹ませてあり、ゴルフバッグや185センチのスキー2セットやスノーボードなど長いものも積み込むことができます」(デザインディレクターのロブ・メルヴィル氏)
そのフロアには「スーパーファブリック」という特許を取得した布がオプションで用意されている。染みや傷、刻み目などができにくく、汚れも付きにくく、洗濯可能で速乾性に優れているというものだ。
南フランスでは、フロントには国際線機内持ち込み用スーツケース2個に加え、ブリーフケースやトートバッグなどが2個プラスアルファ確実に収まった。フロントトランクはほぼ直方体で低い位置から真上から出し入れするので、とても使いやすかった。
そのうち1個の自分のスーツケースを取り出し、リアに置き直してみたが、ピタリと収まった。その周辺にもバッグやジャケットなどを置いて、専用のネットやストラップなどで固定できた。
また、乗り降りの際にシートの後ろからトランクスペースに荷物を置くこともできるから、いちいちテールゲートを開ける手間も省け、この点でも実用的だった。
今回は、フロントに田丸瑞穂カメラマンの撮影機材を納めたところ、折り畳みの三脚まで収まってしまった。リアには僕のスーツケースとブリーフケースなどを置いたが、まだたっぷりと余地が残っていた。ただ、調子に乗って詰め込み過ぎると後方視界が妨げられるし、ブレーキング時に何かがキャビンに飛び込んでこないとも限らない。
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