マクラーレン「GT」は、意外と「積める」&「乗り心地抜群」だった!【スーパーカーでお伊勢参り(前編)】
グランドツーリングには乗り心地が重要! マクラーレン「GT」は?
日本橋から中央通りを銀座方面に進む。平日なので、周りはタクシーやトラック、ミニバンや軽トラックなどがたくさん行き交っている。新型コロナウイルス感染症による非常事態宣言が解除され、路上には日常が取り戻されているようだ。
マクラーレンGTに乗って、まず驚かされるのが乗り心地の良さだ。丁寧に突き上げのカドを取り去り、上下動も抑え込んでいる。最高速326km/h、0-100km/h加速3.2秒という超高性能から想像される硬い乗り心地や激しい突き上げなどが皆無なことに肩透かしさえ喰らわされたような気分に陥る。
「えっ、こんなに乗り心地が良いんですか!?」
助手席の田丸さんも驚いている。
路面の凹凸や舗装の切り替えなどを通過する際に、どんなクルマでもさまざまなショックを大なり小なり乗員に伝えてくるものだが、マクラーレンGTはそれが極めて小さいのだ。
路面からの入力をサスペンションがすべて吸収し、ほとんど車内に伝えてこない。マクラーレン以外の一般的なクルマは、その入力をすべて吸収し切れないから、ショックや細かな振動などを残して乗員に伝えてしまう。
それを実現しているのがプロアクティブ・ダンピング・コントロール(PDC)だ。路面の凹凸に伴って上下するサスペンションの動きをセンサーが読み取り、そのミリ2秒(0.002秒)後には、次に起こりそうなことをコントロール・ユニットが予測的に対応する。
次の動きを予測しながら非常に素早い時間でダンピング特性を変化させられるコントロールユニットを組み合わせた、非常に高度なサスペンションシステムである。マクラーレン720Sと基本構想を同じにしているが、その制御のアルゴリズムとアンチロールシステムがメカニカルに代わり、快適な乗り心地のためにGT用に最適化されている。
首都高速道路に乗り、そこから東名高速に入った。まだ、朝早いというのに、いつもの通り東名高速は混雑している。
そんな状況をマクラーレンGTは耐え忍び、クルマの流れにしたがって下っていく。4.0リッターV8ツインターボチャージドの最高出力620馬力/7500回転と最大トルク630Nm/5500-6500回転の本領は、ホンのわずかしか使われない。
新東名に入り、ガラリと空いたところで深くアクセルペダルを踏み込んでいく。4.0リッターV8のパワーが炸裂し、GTは猛然と加速していく。その加速の凄まじさはスピードメーターが示す数字を見ないとわからない。エンジンやトランスミッションの機械的な精度が恐ろしく高いからなのだろう、ここでもまた余計な振動が伝わってこないのである。音と振動が徹底的に抑えられていて、必要なパワーだけを取り出している。
このストイックな感じが、フェラーリやランボルギーニなどと決定的に違う。イタリア勢は“演出”としてエンジンサウンドを活用しているが、マクラーレンはあくまでも抑制的だ。
GTに限らず、マクラーレン各車に乗るたびに感心させられてしまうのが、シフトパドルの精密な操作感と使いやすさだ。カチ、カチッと精密機械のような操作感を伴うわずかな動きで変速する。トランスミッションの変速動作自体も素早い。また、あまり知られていないが、このパドルはひとつのパーツだから、アップ側とダウン側はつながっている。向かって左側のパドルを引くとダウンするが、押すとアップするのだ。同じように、右側は引くとアップだが、押すとダウンする。これは憶えておくと非常に便利だ。
フラットな姿勢を維持しながら、サスペンションは良く動き、乗り心地はマイルド。それでいて、マクラーレンらしい軽快な身のこなしと圧倒的な動力性能。これ以上ないというくらい快適な高速走行をいったん終えて、一般道に降りた。(後編に続く)
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