なぜタイで発売!? トヨタ「カローラクロス」の謎 アジアで強まるSUV需要とは

カローラクロスのライバルはSUV以外にも存在?

 SUVの需要や人気が高い東南アジアですが、現地では「アジアン・ユーティリティ・ビークル(AUV)」と呼ばれるクルマも人気ジャンルとなっています。

 これは小さいボディサイズに3列シートを備えたクルマで、日産の新興国向けブランド「ダットサン」からは「GOクロス」が販売。なかには日本円で100万円を切る価格の車種もあり、主に新興国での販売を想定したクルマです。

 こうしたAUVはボディサイズやエンジンの排気量、パワーに余裕がありません。実際にGOクロスのボディサイズを確認してみると、全長3955mm×全幅1670mm×全高1560mmとなり、キックスe-POWERよりも全長335mm×全幅90mm×全高50mmも小さくなっています。

 そのボディに7人乗りの3列シートを備えているため、車内空間はかなり狭くなっています。さらに、GOクロスのエンジンは1.2リッターのガソリンエンジンであるため、7人全員が乗車した状態では発進加速や一定速度での巡航では、エンジンや運転手にかなりのストレスがかかることが予想されます。

日産の新興国向けブランド「ダットサン」から販売している「GOクロス」
日産の新興国向けブランド「ダットサン」から販売している「GOクロス」

 このように、AUVは価格を低く抑える代わりに乗り心地や使い勝手などを大きく犠牲にしている一方で、自動車メーカーでは平均所得が高くない国や地域に向けたクルマとしてAUVを販売してきました。

 しかし、近年は東南アジア諸国における国民所得は高まっており、新興国でも日本や欧州と同様のクルマを購入できるほどに経済的に豊かになりつつあります。

 また、SUVはAUVに対して価格面では圧倒的に不利ですが、AUVよりも車内空間やエンジン出力に余裕があります。

 カローラクロスに先んじてタイで販売されたキックスe-POWERは、日本にも導入された世界戦略車であり、新興国国向けに開発されたAUVとは想定している顧客層が大きく異なっているといえるでしょう。

 AUVはSUVと同じく東南アジアで人気のクルマですが、想定しているターゲットの幅の広さにおいて、両者は単純なライバルとはいいづらい関係になっています。

 カローラクロスについて、トヨタは「カローラクロスは今後タイ以外の市場でも販売を予定している」とアナウンス。

 このように東南アジアで相次ぐ新型SUVの発売は、東南アジアの自動車市場の拡大を意味しているといえます。

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