日産「マーチ」は初代が最強か!? 世界で成功したコンパクトカーを振り返る

いまでは伝説級のモデルが、続々と登場!

 女性ユーザーを中心に人気を獲得した初代マーチですが、さらなるユーザー獲得のため、バリエーションの拡充を進めました。

ツインチャージャーエンジンを搭載した「マーチスーパーターボ」
ツインチャージャーエンジンを搭載した「マーチスーパーターボ」

 まずは1983年にメインユーザーである女性に向けた仕様の「マーチ コレット」を追加。コレットは当時の最上級グレード「G」をベースに、チェック柄のシートや、フロント両席バニティミラーなど、よりおしゃれなテイストをプラス。

 後にこのコレットにはルーフ部分を開口部の大きいソフトトップとした「マーチ コレット キャンバストップ」が加わり、コンパクトカーでネックとなる開放感をアピールします。

 そして、1979年に同社のアッパーミドルクラスセダン「セドリック/グロリア」に、国産車初のターボエンジンが搭載されると、ターボ化の波はコンパクトカーへと波及します。

 1985年のマイナーチェンジで、3ドアハッチバックに最高出力85馬力を発揮する1リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載した「マーチターボ」を追加。

 外観にはフォグランプを内蔵するエアロバンパーやリアスポイラーを装備し、2本出しのマフラーとするなど、特別な外観に仕立てられました。

 高性能化はこれに留まらず、1988年にモータースポーツベース車両の「マーチ R」を発売します。

 モータースポーツのレギュレーションの関係から排気量を987ccから930ccにダウンサイジングし、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類の過給機が装着された、日本初のツインチャージャーエンジンを搭載。

 最高出力110馬力を絞り出し、低回転域ではスーパーチャージャーによる過給でレスポンスの良い瞬発力、高回転域ではターボチャージャーの過給により余裕のあるパワーを発揮することで、上位クラスにも負けない走行性能を獲得。

 実際にクラス最強のマシンとして、ラリーをはじめモータースポーツシーンで活躍しました。

 1989年にはマーチRと同じエンジンを搭載し、普段使いできるように装備が充実した「マーチ スーパーターボ」が登場。パワーステアリングも設定されない、かなりのじゃじゃ馬ぶりが、いまも語り継がれています。

 また、この初代マーチのコンポーネントを使って、3台の特別なクルマがつくられました。その第1弾が1987年にデビューした「Be-1」です。

 クラシカルでユーモラスなデザインの内外装のBe-1は、東京モーターショーに出展されると注目を浴び、限定1万台が販売されると争奪戦が繰り広げられ、たちまちプレミア価格の中古車が売られたほどです。

 パイクカー第2弾は1989年に期間限定で発売された「パオ」です。パオのデザインは古いフランス車をイメージさせるもので、キャンバストップも設定され、シックなカラーリングと相まって大ヒットを記録。

 そして、第3弾が「フィガロ」で、1992年に発売。一見すると2シーターに思えましたが、2+2の4シーターで、ルーフからリアウインドウまでが開くオープンカーでした。

 パイクカーシリーズ初のターボエンジンを搭載し、内装のデザインもかなり凝っていて、メーターのフォントや、オーディオのコントロールボタンなど、すべてがクラシカルでした。

 後にフィガロはイギリスで注目され、いままでに数多くの中古車がイギリスへと渡っています。

※ ※ ※

 初代マーチは1992年に2代目にバトンタッチして、生産を終えました。当時のモデルチェンジサイクルは4年というのが定番でしたが、初代マーチは10年間も販売されました。

 さらに、歴代マーチのなかでも初代のバリエーションの多さは突出しており、それほど日産の期待も高かったということでしょう。

 近年はライバルに対して販売面で苦戦しているマーチですが、基本的なコンセプトは初代からぶれておらず、安価なベーシックカーとしてこれからも歴史は続くでしょう。

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