なぜホンダ「ステップワゴン」は苦戦する? ミニバン人気もライバルに追い付けない理由

軽自動車や小型車に偏ったホンダの販売戦略も影響か?

 現行ステップワゴンが2015年に登場したときは、外観が地味なだけでなく、エンジンもハイブリッドモデルを選べず、1.5リッターガソリンターボのみでした。

 1.5リッターターボは実用回転域の駆動力が高くて扱いやすいですが、ミニバンでハイブリッドモデルを選べないというのは、購入のしづらさに繋がりました。

エアロ仕様のホンダ「ステップワゴン スパーダ」
エアロ仕様のホンダ「ステップワゴン スパーダ」

 2017年のマイナーチェンジでハイブリッドモデルが追加されましたが、フルモデルチェンジの時点で用意されていなかったため、挽回するにも限界がありました。

 さらに、現行ステップワゴンの特徴に「わくわくゲート」があります。縦開きのリアゲートに、コンパクトな横開きのサブドアを内蔵して、狭い場所でも開閉しやすいというものです。

 わくわくゲートは縦長なので、3列目シートの左側を床下に格納しておくと、ボディの最後部から乗員が乗り降りすることも可能です。

 わくわくゲートは渾身のアイデア装備でしたが、市場への訴求が不十分で人気が高まらず、2020年1月には非装着車を追加しています。

 しかし非装着にしても、車両価格はわくわくゲート装着車と変わりません。「安さを重視するお客さまのために、価格の安い非装着車を増やした」とはいえないのです。

 このように、ステップワゴンは商品特徴が曖昧です。ライバル車のセレナは、標準ボディを5ナンバーサイズに抑えたミドルミニバンでは、最大級の室内を備えます。3列目シートも快適です。

 ヴォクシー3姉妹車は、内装の質を高め、発売時点からハイブリッドを用意していました。

 ステップワゴンは、明確な特徴を備えていないのが辛いところでしょう。ライバル車と乗り比べると、低床設計で乗降性が良く、走行安定性と乗り心地のバランスはステップワゴンがもっとも優れています。わくわくゲートも実際に使ってみると、実用性に優れています。

 ステップワゴンのハイブリッドモデル(e:HEV)は、モーター駆動が中心のため、加速が滑らかでノイズは小さいです。優れた特徴を備えているのに、ステップワゴンでは訴求効果が乏しいために販売に結び付きません。

 ではなぜ訴求効果が乏しく販売が伸び悩むのでしょうか。一番の理由は、いまのホンダの国内販売が軽自動車に偏っていることです。

 2019年度におけるホンダ車の売れ行きを見ると、国内販売総合1位の「N-BOX」が24万7707台を届け出して、ホンダの国内販売全体の36%を占めました。わずか1車種で販売総数の36%というのは、突出して高いです。

 また、ホンダの軽自動車全体では50%を超えます。さらに「フィット」や「ヴェゼル」、フリードといった全長が4.4m以下のコンパクトな3車種も加えると、ホンダ車全体の82%に達します。

 つまり現在のホンダは、昔を知る中高年齢層を除いた世代には、「軽自動車やコンパクトカーなど小さなクルマを造るメーカー」だと認識されているのです。

 ステップワゴンや「オデッセイ」「シビック」「アコード」「CR-V」などは、軽自動車とコンパクトな車種を除いた「その他の18%」に片付けられてしまいます。

 こうなるとステップワゴンのユーザーも、次はフリード、さらにN-BOXと小さなクルマに乗り替えるでしょう。同時に「ブランドのダウンサイジング」も発生します。

 ステップワゴンの開発に力を注いでも、もはや軽自動車とコンパクトカーに向かったホンダのブランドイメージに合わず、売れ行きを伸ばせません。

 たとえばBMWは、日本では「3シリーズ」の印象が強く、「5シリーズ」や「7シリーズ」の販売は低調です。同じようなことがホンダのミドル/ラージサイズカーにも起こっています。

 今後はコロナ禍の影響と働き方改革の促進により、在宅時間が増えますから、クルマの需要も少しずつ回復するでしょう。

 以前は所得が増えたりお金が貯まったら、都市部に移って通勤時間を減らすことを考える人が多かったですが、今後はリモートワークに適する仕事部屋とクルマをそろえることを考えるでしょう。

 そうなると、ますます軽自動車やコンパクトな車種が注目されます。

 ステップワゴンには、ミニバンユーザーのニーズにピッタリ合ったデザインや機能を採用して、なおかつ効率の良いアピールをする必要があります。

 ホンダは低床設計とミニバン開発が得意なメーカーなので、ステップワゴンも成功させて欲しいです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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4件のコメント

  1. 女性好みではない要素が多い事が敗因ではないでしょうか。特に内装。

  2. 女性好みではない要素が多い事が敗因ではないでしょうか。特に内装。

  3. 単純にステップワゴン売る気が無いですね。
    ステップワゴン欲しい言うてるのに「フリード」推してくるとか。

  4. この記事、なんだかスゲー読み辛い。
    第一、ステップワゴンに限らず今のHONDA車は見合ってない高い価格設定が最大の売れない理由だと思う。

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