映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』劇中車「デロリアン」誕生のヒミツ
どうして順調な滑り出しが一転、DMCプロジェクトは崩壊したのか?
デロリアンは、英国北アイルランドのベルファスト郊外に新たに建設した巨大工場で生産されたことから、会社の国籍はアメリカながら、開発と生産は英国、デザインはイタリアという、極めて国際的なメーカーとなった。
前宣伝の効果も手伝ってか、多くのバックオーダーをかかえるなかでの正式発売となったDMC-12は、初年度から約6500台を販売するなど好調な滑り出しとなる。
また、その後もPRVユニットのターボ化や、4枚のガルウィングドアを持つ4シーターセダンなどの新展開も次々発表。その前途は、洋々であるかに見えた。
ところが、肝心のDMC-12のクオリティ問題に端を発する売り上げの激減や、北アイルランドへの工場誘致の条件として交付されていたイギリス政府の補助金が停止されたことで、翌1982年には経営状況が一気に悪化した。
さらにジョン・デロリアン自身も会社資産の私的流用が疑われた上に、コカイン取引の嫌疑を懸けられて完全に失脚。結局同年のクリスマスまでに、わずか8538台のDMC-12を製作した段階で、デロリアンの夢のプロジェクトは崩壊してしまったのだ。
そののち、ジョン・デロリアンのコカイン取引容疑については、長い裁判の末に無罪となった。自由の身となった彼は、再び新たな高性能車を創造するプロジェクトを抱いていたが、その夢を果たすことなく、2005年3月19日に脳卒中に伴う合併症のため、80歳でこの世を去ってしまった。
それでも、DMC-12の命運が尽きることはなかった。DMC社が破産したのち、残された組み立てのコンポーネンツと生産設備を、生粋のデロリアン愛好家であるステファン・ウェイン氏が買収。
新たな「デロリアン・モーター・カンパニー」として、世界中のエンスージアストにリペア用パーツを供給し続けている。
さらに、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』での活躍から、現代では世界的なコレクターズアイテムとして認知されていることもあって、デロリアンDMC-12は、映画の劇中車仕様にカスタムもおこなわれているようだ。
DMC-12は、新生産車やEV(電気自動車)としての復活の噂が絶えないが、映画の劇中車というだけでなく、自動車史上においても重要で魅力的なストーリーを持っているからこそであろう。
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