マツダがロータリー搭載「RX-9」登場の布石か!? なぜ「RX-VISION GT3」を登場させたのか

マツダにはブランドイメージを象徴するFRスポーツカーが必要

 気になるのは、クルマの中身です。駆動方式について、これまでのFRという記載から一歩進んで、フロントミッドシップのトランスアクスル後輪駆動としています。その上で、前後の重量配分を明記しました。

 サスペンションについても、フロントがダブルウイッシュボーンで、リアはマルチリンク式との表記です。

東京モーターショー2015で話題となったマツダ「RX-VISION」
東京モーターショー2015で話題となったマツダ「RX-VISION」

 SKYACTIV-Rについてマツダは、これまでローター数や排気量を明らかにしたことはありませんでした。

 FIA GT3は、高性能な量産スポーツカーが参戦することは珍しくなく、スペックも量産モデルの最上級という位置付けの場合が多くあります。

 グランツーリスモには、1997年から「ユーノスロードスター」「ユーノスコスモ」「アンフィニRX-7」を皮切りに、「コスモスポーツ」「ND(4代目)ロードスター」などのマツダの量産車を収録。

 レースカーでは、1991年のルマン24時間優勝者の「787B」と、米耐久レース・グランダムGXシリーズ参戦の「マツダ6」改良版を採用。バーチャルカーでは、スポーツプロトタイプを想定した2015年「LM55 VISION」があります。

 また、2022年頃量産と噂される、次期「マツダ6」は直列6気筒エンジン搭載のFRになる可能性が高いといわれています。

 そのため、マツダとしてはこれから、ブランドイメージを象徴するFRスポーツカーの必要性が高まるはずです。

 こうしたこれまでの流れやデータの開示方法から、今回の発表が単なるゲーム用バーチャルカーとは断定できないように思えます。

 仮に、今回の発表がRX-VISION改め、「RX-9」量産化に向けたマーケティング戦略の一環だとします。

 その場合、このタイミングでの公表が、マツダにとってどうプラスになるのでしょうか。

 最大の要因は、経営が厳しい時期だからこそ、未来に向けた新しい話題が必要なことです。

 マツダの2020年3月期グローバル販売台数は前期比9%減の141万9000台。営業利益は半減、純利益は4分の1まで減少しました。2020年1月下旬から3月中旬、中国での新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く出ました。

 3月初旬からは、新型コロナウイルス感染拡大の影響が世界的に広がっており、適正な在庫水準に戻すまで日本や東南アジアでの生産調整が続きます。そのため、2021年3月期の見通しと配当予想は未定となりました。

 産業界全体として、リーマンショックやオイルショックを超える世界的な長期不況が懸念されるなか、欧州メーカーではモータースポーツ撤退や、スポーツモデル計画の凍結などが噂されています。

 そんな時期だからこそ、マツダ中期経営計画にある「独自の商品・顧客体験への投資」を続ける必要があると思います。

 RX-VISION GT3 コンセプトは、優れたバーチャルレースカーであると同時に、マツダの未来に向けた、リアルなプロジェクトである。そう信じたいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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