なぜ日産はジュークで勝負せず? 新型SUV「キックス」を日本投入する狙いとは
ジュークから新型SUVキックスにバトンタッチする理由とは
その理由とはパッケージングです。
世界で150万台以上を販売するヒット作となった先代ジュークは、後席の居住性は割り切ったクーペのようなコンセプトでした。“新しさ”を求める人々のパーソナルニーズを考え、個性を重視したからです。
2010年のデビューから数年間のコンパクトSUV黎明期は日本でもそれで受け入れられ大ヒット車種となりました。
しかし、その後の市場拡大に伴いこのクラスのニーズは変化。SUV市場の広がりと一般化によって、コンパクトSUVでも後席居住性が求められる方向へシフトしたのです。
その波に乗ったのがホンダ「ヴェゼル」やマツダ「CX-30」、そしてトヨタ「ライズ」など。そして2020年内発売予定の「ヤリスクロス」もその路線です。
一方のジュークは新型モデルでも(先代よりは大幅アップしたとはいえ)後席居住性ではなく軽快なプロポーションを重視。
小型車に対する割り切りがある欧州では受け入れられるものの、日本ではそれほど多くの人を振り向かせることができない可能性が高いといえます。
そこで新型キックスの出番となりました。新型キックスの全長は4295mmで新型ジュークの4210mmに比べると長いうえに、真横からのシルエットを比べると違いが一目瞭然。
ルーフ後方がどんどん低くなるジュークに対し、新型キックスはジュークよりは傾斜がゆるく、そのぶん後席の天地高を確保できています。
その結果、後席に座ると開放感でも違いを実感。ジュークより実用的なコンパクトクロスオーバーSUVなのです。
日本では新型ジュークが導入されず、新型キックスへとバトンタッチする理由。そこにはコンパクトSUVをとりまくマーケットの変化が大きく影響しているといっていいでしょう。クーペのような感覚より、より広い室内が好まれるのです。
現在、日本で販売しているジュークはファミリーユーザーに推奨できるクルマではありません。しかし、その後継として導入される見込みの新型キックスなら、ファミリーユーザーにもお勧めできるコンパクトSUVといえるでしょう。2020年6月といわれているデビューが楽しみです。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
「真横からのシルエットを比べると違いが一目瞭然」
しかしキックスの側面写真が無いというちぐはぐさ