かつて憧れたNSXやスープラ復活も販売不振!? 日本のスポーツカーが低迷する訳

SUVの台頭でスポーツカーの存在意義が変化した

 このように各車の事情を見てくると、NSX、スープラ、GT-Rが売れ行きを下げた背景には、価格上昇に加えて納期の長期化や具体的な時期の分かりにくさ、GT-Rについては基本設計が古くなったことなども挙げられます。

日産「GT-R NISMO/GT-R 2020年モデル」
日産「GT-R NISMO/GT-R 2020年モデル」

 とくにNSXとスープラは、日本車でありながら、海外で生産されています。かつて国内で生産されていた時代に比べると、大幅に高級化され、日本よりも海外市場に重点を置いています。

 現行スープラは、BMWとの提携に基づいて開発されました。エンジンやプラットフォーム、さらに左側に装着されたウインカーレバーなど、細かな部分までBMW「Z4」との共通点が多いです。

 各車とも海外向けのスポーツカーになったことで、価格の高額化とともに納期も伸びて、国内では所有しにくくなりました。

 そしてNSXとスープラは、長らく国内販売を中断していたので、ユーザーが離れてしまいました。この背景にあるのは、世界的なスポーツカー需要の冷え込みです。

 たとえば1986年に発売されたスープラは、3月決算期には日本だけで1か月に2000台から3000台を登録したこともありましたが、いまは当時の約6%です。

 スポーツカーの旺盛な需要が、1990年代中盤から急速に衰退しました。2000年代に入ると海外でもSUVが人気を高めたので、スポーツカーの販売低下は世界的に広がりました。

 このような市場の変化で、スポーツカーには少量生産で成り立つことが求められ、高級スポーツカー路線に発展したわけです。NSX、GT-Rはもちろん、BMWと手を組んで合理化を図るスープラはその典型でしょう。

 需要が下がれば高級路線に切り替えるのも理解できますが、納期が長すぎるのは困ります。さすがに1年も待たされると、ユーザーには転勤や転居の必要が生じたり、納車を待つ間に愛車の車検期間が満了するからです。

 この状態が続くと、販売店にとってスポーツカーが重荷になり、ますます売れ行きを下げる悪循環に陥ります。

※ ※ ※

 販売が低調だからフルモデルチェンジの周期が伸びるのは仕方ありませんが、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を含めて、定期的な改良が求められます。

 それがスポーツカーの安心感や満足度を高め、クルマの世界を楽しくすることにも繋がります。

 スポーツカーは実用的ではないですが、クルマ文化においては欠かせない存在だといえます。進化を続けることが大切です。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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3件のコメント

  1. 価格を考えれば30年間と比べればおおむね倍になっているが、収入そのものが30年前とほぼ変わっていないか、労働人口を考えれば非正規雇用者が多くなっているから収入そのものが減っている。
    30年前ならNSXは無理だとしても、それなりの企業に勤めていればGT-Rでローンが組めたし、スープラなら勤め人なら買える時代だったが、今はそれなりの企業勤めではスープラを買うのにローンが組めないし、組んでも10年ローン~15年ローンのレベル。
    そらぁ売れるわけがないわな。

  2. 昔に比べて車に求められるテクノロジーが桁違いに増えて複雑になっている分価格が高くなり、わざわざ多額の開発費を使った技術を省いたモデルというのも販売しにくくなってしまっている。と言ってももう元は取れていると思うので、パワーメーカーがもっと社会貢献的に買える、楽しい車を販売してもらいたいものです。

  3. セルシオも初代のAなら450万でしたからね
    32Rもアテーサを考えたら決して高くないしね。

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