高級ミニバンはアルファードに統合? リストラ対象の車種はどれ? トヨタ全店全車の変革とは
販売店は弱肉強食!? 統合後のトヨタディーラーはどうなる?
全店が全車を販売する体制に移行した結果、ユーザーに対するサービスがどのように変わるかでしょう。販売店に尋ねると「車種の数や店舗数が減るのは避けられない」といいます。
車種の数については、前述のとおり、アルファードとヴェルファイアのどちらか一方が廃止されたりします。機能は基本的に同じでも、デザインを選べる楽しさは薄れます。
店舗数の削減も考えられます。販売系列によって扱う車種が異なると、例えばクラウンが欲しいユーザーは、店舗が少し遠くてもトヨタ店まで買いに出かけます。しかし2020年5月以降は、近所のネッツ店やカローラ店でも購入できるようになります。
同様にトヨタ店でカローラを買うことも可能です。そうなると遠方の販売店まで出かける必要はありません。
トヨタの販売店では「いま今まで付き合いのあるお客さまが、ほかのトヨタディーラーに移ることはないと思いますが、新規のお客さまは違います。系列に関係なく、最寄りの店舗で購入するでしょう」といいます。
どこの店舗でも買えるのは、ユーザーにとって便利ですが、この状態が続くとトヨタ系販売会社同士の競争が激しくなります。販売店からは「力の強い会社が弱い方を吸収することも考えられます」という話も聞かれます。
また東京地区の販売会社は、もともとトヨタ直営だったので、2019年4月にトヨタモビリティ東京に統合されました。ほかの地域はメーカー資本に頼らない販売会社も多いため、東京のように統合するのは難しいです。
それでも各地域のトヨタ系販売会社がグループ企業を構成していて、グループ内で店舗を統廃合することは考えられます。例えば同じグループ企業に属するトヨタ店とネッツ店が隣接している場合、どちらかを廃止することはあるでしょう。
このようにトヨタの全店/全車扱いがスタートすると、車種の廃止だけでなく、いろいろなサービスの縮小が考えられます。これはユーザーの不便に結び付くかも知れません。
その一方で、従来の新車販売店をカーシェアリングやレンタカーの営業所に変更するなど、販売会社の新しいサービスが始まることも考えられます。
販売力だけでなく、優れた企画力によって地域のユーザーに貢献できる販売会社が生き残るわけです。
今後はメーカーと販売会社にとって、厳しい時代になるかも知れません。その競争はトヨタ同士に留まらず、ほかメーカーも巻き込むことになります。
健全な競争をおこなって、サービスや商品力をさらに高めて欲しいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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