絶滅寸前のMT車が増加!? 設定拡大するトヨタやマツダと減らすスバルの違いはどこに?

なぜ? MT車のイメージが強かったスバルは減少傾向

 MT車をラインナップする事情は、軽自動車などは少し異なるようです。たとえばスズキ「ワゴンR」や「アルト」は、現行世代も含めて歴代モデルいずれもMTが用意されています。

スバル「WRX STI」最後の限定車「EJ20 ファイナルエディション」
スバル「WRX STI」最後の限定車「EJ20 ファイナルエディション」

 その理由について開発者に尋ねたところ、「年配の人でMTしか運転できないというニーズに応えるため」と教えてくれました。

 ちなみにワゴンRは現行モデルと先代モデルはデビュー時にMTの設定がなく、フルモデルチェンジから数か月遅れてMTモデルが追加されています。これについては「開発のタイミングの違い」とされています。

 いずれも前提となるのは、日本でもMTモデルを販売する車種は、国内専売の軽自動車を除けば、海外向けにもMTモデルが設定されていることでしょう。メカニズムを共用することで、絶対的なMT販売台数が少ない日本にも用意できるというわけです。

 マツダやトヨタとは逆に、MTが減っているのがスバルです。かつて同社はMTを設定するイメージが強かったのですが、2019年12月に「WRX STI」のオーダーが終了した現在、新車でMTを選べるのは、トヨタ 86の姉妹車である「BRZ」だけになりました。スバルにはどのような事情があるのでしょうか。

 スバルがMTを減らす理由は、同社の「アイサイト」が大きく関係しているようです。

「海外ではMTを展開しているモデルもありますし、日本でも求める声があるのは理解しています。しかし現在、日本において、多くのユーザーに支持を頂いているのはアイサイト(先進安全運転支援システム)であり、そちらを優先したバリエーション展開としています。将来的にもアイサイトを搭載したMT車が設定されない、とまでは言い切れませんが」とスバル広報部は説明します。

 スバルも海外の一部地域では、BRZ以外のモデルにもMTを設定しています。しかしそれらのMT車にはアイサイトが搭載されていません。

 自動ブレーキ機能に関しては、MTに組み合わせることも理論的には可能ですが、現行世代のアイサイトはACCの渋滞停止保持機能を組み込むことが基本であり、スバルがスタンダートと考えるその機能を、停止時にドライバー自身がクラッチ操作をする必要があるMTには組み込むことができません。そこが大きなネックとなっていると思われます。

 ちなみに、マツダ CX-5などのACCでは、AT車の場合は渋滞時停止保持機能を備えていますが、MT車では車速が30km/hになると作動キャンセルになるなど、トランスミッションによる制御の違いがあります。

 理想とする運転支援装備を全車に組み込むのか、それとも、メカニズム上、組み込むことができないMT車は割り切って一部機能を省略するかのといったところが、メーカーの考え方の違いといえそうです。

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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