一瞬で完売したシトロエンのMPV「ベルランゴ」 日本でカングーの牙城を崩すのか【試乗】

2020年秋の正式導入を前に、2019年10月「デビューエディション」という特別仕様車をオンラインで予約受付したところ、わずか5時間半で完売したシトロエンのMPVが「ベルランゴ」だ。モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が、そんな人気のモデルを試乗した。

シトロエンらしいユニークなデザインを持つMPV

 こういう「MPV(=マルチ パーパス ビークル)」と呼ばれるタイプのクルマは、欧州にはいくつもあって、じつはブランドや外見が違っても中身が同じというクルマもある。日本に正規で導入されている例では、ルノー「カングー」が依然として高い人気を誇っているが、その他は並行輸入された個体をごくまれに見かけることがあるぐらいだ。

シトロエン「ベルランゴ」の走り。全高1844mmだが横風の影響もそれほど受けない
シトロエン「ベルランゴ」の走り。全高1844mmだが横風の影響もそれほど受けない

 そんななか、シトロエンが「ベルランゴ」の日本への正規輸入を決断。2019年10月にオンライン予約を開始するや、わずか5時間半で枠がいっぱいになり、11月に2回目のオンライン予約を実施するも、これまた早々に予定台数に達するほどの熱視線が向けられた。

 本稿執筆時点では予約申込は受け付けておらず、手に入れる次のチャンスは、正規導入が予定される2020年秋頃となる。

 件のベルランゴは、現行型で3代目。初代の登場は1996年と、すでに24年も前の話になる。

 当時のクサラをベースに開発され、じつは当時、日本に正規輸入される計画もあったらしいのだが、事情により実現しなかった。カングーの導入よりも前のことで、もし実現していたら歴史は変わっていたかもしれない。

 つづく2008年に登場した初代C4をベースとする2代目ともども、いずれも10年を超える長きにわたって現役をつとめた。そして3代目が2018年のジュネーブショーで初披露され、ほどなく欧州で市販が開始されて現在にいたる。

 2019年に創立100年周年を迎えたシトロエンの歴史は、人々の「移動の自由」と「自由な移動」を支え、それをコンフォート(快適)なものとすることを追求してきた。

 そんな自身の快適性をさらに高めようという新しい概念である「シトロエン アドバンスド コンフォート」のコンセプトを足まわりやシートなどに盛り込んだ極めて高い快適性や、C4カクタス以降の新生シトロエンのデザインが好評であることが効いて、近年ますますグローバル化を進めるシトロエンは、世界各国で評価されブランドイメージを高めているという。

 そんな新生シトロエンのデザイン哲学を取り入れ、過去2世代とは別モノといえるほどガラリと雰囲気の変わった外観は見てのとおり。個性的な意匠のランプ類や特徴的なエアバンプをはじめ、ひとつひとつに遊び心があり、ひとたび目にしたら忘れないほど極めてユニークに仕立てられている。

 同じくいたるところにギミックを満載したインテリアもとてもユニークだ。全長はそれほど長くないにせよ、全幅と全高がほぼ同じスクエアな形状のボディは車内が広々としていて、その中に合計186リットルにもおよぶ全28カ所ものストレージスペースが設けられていて興味深い。

 たとえばルーフの大半を覆うパノラミックルーフと収納スペースを融合させるという斬新なアイデアを具現化した「Modutop(モデュトップ)」と呼ぶルーフ部のスペースは、フロントに設けた収納トレイのほか、中央部には最大14リットルのバッグが収納可能になっている。

MODUTOP(モジュトップ)と呼ばれる、パノラミックガラスルーフと多機能ルーフストレージがひとつになったルーフ
MODUTOP(モジュトップ)と呼ばれる、パノラミックガラスルーフと多機能ルーフストレージがひとつになったルーフ

 パノラミックルーフは電動サンシェードが付き、ルーフアーチ中央にはムードライトも備わる。さらに後方のラゲッジスペースの真上には後席側とリアゲート側の両方からアクセス可能な約60リットルもの容量を持つシーリングボックスが設けられている。

 運転席まわりも凝っていて、タブレットのような大画面の8インチタッチスクリーンディスプレイわきのダッシュボード上面には、「Topbox」と名付けたリッド付きのストレージが設けられているほか、周囲をみわたすとインパネだけでなくドア内側の大きなスペースや、フロントシートの床下をえぐったりと、随所にシトロエンらしい気の利いた収納スペースがある。

 助手席エアバッグをルーフ部分から展開するようにしたおかげでグローブボックスも11.8リットルの容量を確保しており、車検証や取扱説明書も余裕を持って収められるようになったのも助かる。

 リアのスライドドアを開けると、3人分の独立した幅の等しいシートが並ぶ。これによる使い勝手もベルランゴならでは。

 リクライニングができないのは少々残念だが、それぞれ個別に折り畳みが可能で、すべて倒すとかなり広いスペースができあがり、その状態で奥行きは1.88mとなり、助手席も倒すと2.7mまでの長尺物も積める。

 横開きではなく跳ね上げ式のバックドアには、最近では数少ないガラスハッチが単独で開閉できるのも重宝する。参考までに、むこうには商用モデルの「ベルランゴ・バン」はもちろん、乗用モデルに初めて設定されたロングホイールベースの3列シート仕様もあるそうだ。

【写真】圧倒的な室内空間の広さ! シトロエン「ベルランゴ」をチェック(26枚)

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