戦車みたいな軽トラックがあった!? ユニークすぎる軽商用車3選
普段、見かける機会が多い軽商用車ですが、荷物を運ぶことを最優先に設計されているため、個性的な要素はあまり感じられません。しかし、かつて販売された軽商用車のなかには、とても個性的なモデルがありました。そこで、ユニークすぎる軽商用車を3車種ピックアップして紹介します。
個性豊かな面白すぎる軽商用車たち
街なかの物流に欠かせないクルマといえば軽商用車です。現在、軽トラックやバンは年間に約40万台販売されており、最盛期には70万台以上も販売され、私達の生活を支えています。
当然ながら軽商用車は荷物の運搬に特化して開発されていますから、それ以外の要素は重要ではなく、個性的な面はあまり感じられません。
しかし、かつて販売された軽商用車のなかには、とても個性的なモデルがありました。そこで、ユニークすぎる軽商用車を3車種ピックアップして紹介します。
●ダイハツ「フェローバギィ」
1966年に登場したダイハツ初代「フェロー」は、日本車初の角型ヘッドライトや、足まわりに4輪独立懸架を採用するなど、当時としては先進的な軽自動車でした。
ボディタイプは乗用車の2ドアセダンと商用車の3ドアバン、ピックアップトラックをラインナップし、このトラックをベースにつくられた試作車が、1968年開催の第15回東京モーターショーに参考出品され、大きな反響を呼びます。
その試作車とは「フェローバギィ」のことで、モーターショーの来場者から好評を博したため市販化が決定し、安全性などの改良を加えたうえで1970年に100台限定で発売されました。
トラックのシャシに架装されたボディは強化プラスチック製で、ドアを持たないバスタブ型とされ、乗車定員2名に最大積載量150kgの軽トラックに分類。
本格的なロールバーやグリルガードが装備されており、アメリカでつくられていた「デューンバギー」を彷彿とさせるデザインは、当時かなり斬新だったのではないでしょうか。
パワートレインは26馬力の360cc水冷2サイクル2気筒エンジンをフロントに搭載してリアを駆動するFRとされ、車重はわずか440kgと軽量です。
見た目は砂地を疾走するバギーですが、10インチタイヤのため最低地上高が低いことから、悪路走破性は高くないと容易に想像できるので、実際には手軽にバギーの雰囲気を味わいたいレジャー専用車というクルマだったと思われます。
なお、フェローバギィの価格は37万8000円と、同年に発売された軽乗用車の「フェローMAX」と同じ価格帯だったので、100台限定の割には安価に設定されていました。
●ホンダ「TN-V」
ホンダが1963年に同社初の4輪自動車として発売したのが、軽トラックの「T360」です。360cc水冷直列4気筒DOHCエンジンを搭載する、当時の常識では考えられないほど高性能な軽トラックとして、いまも語り継がれています。
しかし、軽トラックには高回転型エンジンは求められておらず、販売が低迷したため、1967年に空冷直列2気筒エンジンを搭載する「TN360」にバトンタッチされました。
そして、代を重ねて1972年に「TN-V」を発売。ボディはオーソドックスなキャブオーバータイプの軽トラックですが、最大の特徴はフロントフェイスで、丸目のヘッドライトが縦に並ぶ4灯式となっていました。
軽トラックでは日本初となる4灯式ヘッドライトについて、ホンダは安全性の高さから採用したといいますが、実際には、コストをかけてでもライバルに対して個性を主張する手段だったのではないでしょうか。
軽自動車の規格が改定されて550ccになると、1977年に後継車の「TNアクティ」が発売され、ヘッドライトはオーソドックスな丸目2灯に改められました。
なお、TN-Vシリーズ以外で、軽商用車に4灯式ヘッドライトが採用された事例はありません。