メルセデスのピュアEV「EQC」 その走りはテスラ「モデルS」などのSUVとどう違う?【試乗】
操作方法もその走り味も、メルセデスらしさを極めている
今回試乗できたのはスタンダードモデル「EQC400 4MATIC」だったが、特別仕様車の「エディション1886」には放射状の細かい模様の専用ホイールが組み込まれている。
エクステリアデザインは、どこを見ても角が丸く、ヌメッとした印象で全体がひとつの塊に見える。それでもフロントグリルの真ん中にスリーポインテッドスターが鎮座することで、誰もが即座にメルセデス・ベンツのSUVと認識できる。
最近のメルセデス・ベンツ車ではおなじみとなっているが、MBUX(MercedesーBenz User Experience)と呼ぶ、音声認識アシスタントで操作できるインフォテインメントも装備されている。
これはもちろんEV用にモディファイされて、航続距離、充電状況、エネルギーフローなどの情報が得られ、充電時間や出発時刻に合わせた空調などの設定もできるようになっている。
EQCに乗り込んで走り出すまでの操作は、他のメルセデス・ベンツのモデルと何ひとつ変わるところはない。もし日常的にメルセデス・ベンツに乗っているのなら、EVということをまったく気にすることなく、何のコクピットドリルも不要でそのまま乗ることができるはずだ。
シートポジションを合わせて、ハンドルとミラーの位置も合わせて、シートベルトをして、ブレーキペダルを踏みながら左手でスタートボタンを押し、右手でセレクターを下に下げればDレンジに入って、アクセルペダルを踏めば走り出す。
もしかすると、助手席に座る奥さまはこのクルマがEVだとは気づかずに「あらっ、今度のクルマはずいぶん静かになったのね」とつぶやくかもしれない。それほどまでに、EQCはメルセデスらしさを追求している。
エンジンがないことから、当然吸気音や排気音、エンジンの回転音もない。ピュアEVだが、インバータの音もほとんど聞こええてこない。
さらにスピードを上げていっても、風切り音もタイヤのパターンノイズ/ロードノイズも最小限に抑えられていて、今のメルセデス・ベンツのラインナップのなかで、静けさではトップランクのモデルといえる。
ただ運転の仕方でほかのメルセデス・ベンツ車と違っているのは、パドルシフトの使い方だろう。
トランスミッションがないので、もちろんシフトダウンもアップもできないのだが、アクセルペダルを戻したときの回生の強さを、パドルによって変更できる。通常は「D」になっていて最大減速力が0.6m/s2だ。
左側のパドルを一度引くと「D-」になり、1.7m/s2でブレーキランプが点灯する程度の減速力になる。
さらに左パドルを引くと「D–」になり、2.5m/s2という高速道路の本線上の料金所に向かってスピードダウンするくらいの強めの減速力が出る。
このように、ワンペダルドライビングができそうな回生ブレーキだが、停止までは制御しないのとクリープは働くので、最後はブレーキペダルを使って止まらなくてはならない。こういう点でも、EQCというEVを特殊なクルマ扱いせず、これまでのメルセデス・ベンツと変わらない走りと運転の仕方を目指しているのがわかる。
ブレーキペダルの感触はダイレクトな感触ではなく、強いスプリングを介して押すような感じが、通常のエンジン付きメルセデス・ベンツモデルとは違う点となる。
このように静かで滑らかなEQCの走り味は、EVテイストを丸出しにした未来感ある走りのテスラ「モデルS」や、スポーティな走りを売りにしたジャガー「Iペイス」などともまったく異なっている。上級なメルセデス・ベンツの乗り味をEVで味わえるように仕立てたのがEQCといえる。
試乗車:Mercedes−Benz EQC400 4MATIC
●車両本体価格(消費税込):1080万円
・全長:4770mm
・全幅:1925mm
・全高:1625mm
・ホイールベース:2875mm
・モーター最高出力:408馬力/4160rpm
・モーター最大トルク:765Nm/0−3560rpm
・バッテリー容量:80kWh
・トランスミッション:1速固定式
・駆動方式:4WD
・一充電走行距離(WLTCモード):400km
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ:235/50R20(前)255/45R20(後)
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