ドコドコ音はもう聞けない!? スバル車からボクサーサウンドが消えた理由とは

高性能の証だったボクサーサウンドと引き換えに得たものとは?

 水平対向エンジンは、低重心・高剛性・理想的な左右の重量バランスを実現しやすいという特性があり、ショートストローク化によって高回転が得意で馬力を追求できるのが特徴です。

 そのため、1990年代の「インプレッサ」は、ターボ付きとはいえ2リッターで280馬力を発揮するなど、抜群のハイパワーが自慢でした。

名機「EJ20」型エンジンを最初に搭載したスバル初代「レガシィ」
名機「EJ20」型エンジンを最初に搭載したスバル初代「レガシィ」

 しかし水平対向エンジンは、部品点数が多い上に排気類の取り回しが複雑になりがちで、生産コストが高いというデメリットもあります。また、日常での使い勝手を考慮して低回転でもトルクが出しやすいロングストローク化には向かない構造といわれています。

 さらに横方向に一定の幅が必要となる上に、エアコンやパワステなどの補器類までを狭いエンジンルームに収めなければならず、結果として整備性が悪くなってしまうというデメリットもありました。

 不等長エキマニならではのボクサーサウンドという個性を手放してでも、ハイパワーとスムーズさの両立、燃費や静粛性という環境性能など時代のニーズに応える必要があったのです。

 それでも、レガシィはもちろん、弟分であるインプレッサも2代目の途中までは不等長エキマニを装着し、その高性能の証としてボクサーサウンドは多くの人に愛されていました。

 この独特の排気音は、クルマ好きにはたまらない、力強いビートの「ドコドコ」した音質で、アメリカのマッスルカーなどで人気のV型8気筒エンジンの「ドロドロ」に通じる、エンジンの鼓動をはっきりと感じさせるものでした。

 ボクサーエンジン自体はまだまだ続いていくでしょうが、燃費効率に悪影響が出やすい排気干渉を起こす不等長エキマニをスバルが今後採用するとはいいがたい部分もあります。

 しかし、現代のスバル車でボクサーサウンドを楽しみたいという人は、社外品の不等長エキマニを装着するという方法があります。
 
 例えば、アフターマーケットには、カスタムメーカーから「BRZ/86」用に開発された「不等長エキゾーストマニホールド」が販売されています。

 エキマニをあえて不等長にすることで意図的に排気干渉を起こし、ボクサーエンジンらしい「ドコドコ」を再現することを可能にしたマフラーが開発されること自体、いかにボクサーサウンドを堪能したいユーザーが多いかがわかる証拠ともいえます。

※ ※ ※

 スバルがボクサーサウンドという個性より、静粛性や燃費性能を追求するためには、製造に手間のかかり、レイアウトが難しい等長エキマニを、あえて採用することによりスムーズな回転を確保する必要があったのです。

 ボクサーサウンドはすっかり大人しくなりましたが、ボクサーエンジンはまだまだ魅力的で独特の個性を持っています。

 クルマは常に進化を続けてきました。その過程では、時代のニーズに合わせて変化しなければいけないものもあり、ボクサーサウンドの消滅はそのひとつだといえるでしょう。

【画像】スバル初代「レガシィ」に搭載されたEJ20型のエンジンルーム(25枚)

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Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ

2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。

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