快適装備なんて無くていい!? 超硬派な漢のクルマ3選
近年、クルマの装備は飛躍的に進歩し、安全性や快適性がますます向上していますが、かつては、あえて快適装備を省いたストイックなクルマも存在しました。そこで、走ることに特化した硬派なクルマを3車種ピックアップして紹介します。
走ることだけが目的のピュアなモデルたち
マイカーの普及が加速した1970年代のころ、エアコン(クーラー)やパワーステアリング、パワーウインドウなどの快適装備を搭載していないモデルが一般的でした。
それから歳月を経てクルマの装備は進化とともに安価でつくられるようになり、現在ではほぼすべての乗用車に上記の装備が標準で搭載されています。
しかし、かつて販売されたクルマのなかには、あえて快適装備を搭載せず、走るための性能向上に特化したクルマが存在。
そこで、ストイックなまでに硬派なクルマを3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイラインGT-R」
1966年に日産とプリンスが合併して新たなクルマ作りがスタートし、1968年には日産ブランド初の「スカイライン」が発売されます。
通算で3代目となるスカイラインは、後に「ハコスカ」の愛称で親しまれました。
ボディバリエーションは4ドアセダン、5ドアステーションワゴン、5ドアバンの3タイプで発売され、後に2ドアハードトップが加わります。
エンジンは、トップグレードの「2000GT」シリーズに2リッター直列6気筒「L20型」を搭載し、ほかにも1.5リッターと1.8リッターの直列4気筒を搭載したモデルをラインナップ。
この3代目スカイラインが歴史に名を残すきっかけとなったのが、初代「スカイラインGT-R」の誕生です。
初代スカイラインGT-Rはレースに出場するために作られたモデルで、1969年2月に4ドアセダン(PGC10型)が登場し、1970年10月には2ドアハードトップ(KPGC10型)へとチェンジします。
エンジンはプリンス時代のレーシングマシン「R380」用をベースに公道走行用に再設計した、2リッター直列6気筒DOHCの「S20型」を搭載。最高出力160馬力を誇り、量産車世界初の1気筒あたり4バルブを採用していました。
1969年当時、大卒の初任給が3万円ほどだった時代に新車価格は154万円と、かなり高額なクルマでしたが、ラジオはおろかヒーターさえも付いていません。
上級グレードではクーラーがオプションで装着できましたが、当然、GT-Rには用意されず、速く走るための装備以外は皆無というくらいストイックなモデルでした。
また、当時は上級グレードを指名買いするケースが多く、スカイラインのなかで一番高額なGT-Rを素性も知らないまま買うユーザーもいたようです。
しかし、装備がなにも無く、エンジン音がうるさいしハンドルやクラッチも重たいと、すぐに手放してしまったユーザーも多かったという逸話があります。
●三菱「ジープ」
国産クロスカントリー4WD車の原点といえば三菱「ジープ」が挙げられ、速く走ることではなく悪路の走行性能をストイックなまでに追求したクルマです。
1952年に三菱自動車の前身である新三菱重工業とアメリカのウイリス・オーバーランド社との間で締結された契約のもと、ノックダウン方式により、1953年にはジープ第1号車が完成しました。
1956年からは部品を国産化したジープの生産が本格的に始まり、以来約半世紀に渡って根強いファンに応え、20万台を超える台数が生産されました。
手動でトランスファーを切り替えるシンプルなメカニズムのパートタイム4WDシステムと、長いサスペンションストロークによって、高い悪路走破性能を発揮。
また、トラックと同じ構造のハシゴ型フレームと前後リーフスプリング(板バネ)の採用によって、頑丈で高い耐久性を誇りました。
ボディタイプはショートボディ、ミドルボディ、ロングボディがあり、ソフトトップとメタルトップが設定されるなど豊富なバリエーションを展開。
歴代モデルに搭載されたエンジンも多岐にわたり、ガソリンとディーゼルが用途によって選べました。
生産開始当初から装備は簡素化されており、快適装備というとヒーターとラジオくらいです。決して軽いクルマではありませんがパワーステアリングも装着されておらず、興味本位で買ってみたものの普段使いには辛く、前出のスカイラインGT-Rと同様にすぐ売ってしまうユーザーも多かったといいます。
1998年に専用ボディカラー、専用幌生地、防錆強などを採用した「最終生産記念車」が発売され、国産ジープは長い歴史に幕を閉じました。