オールシーズンタイヤは「万能タイヤ」!? その実力をスタッドレスと比べてみた

スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤ、スノー/アイス路面で乗って比較した

 まずはスノー路面を走行します。試走したときの気温はマイナス6.7度で天候は曇り。前日から降った雪のため、路面は圧雪の上にふかふかとした新雪が積もっている状態です。

左(グレーのプリウス)はヨコハマのスタッドレスタイヤ「アイスガード6 iG60」、右(白プリウス)はオールシーズンタイヤ「ブルーアース4S AW21」を装着
左(グレーのプリウス)はヨコハマのスタッドレスタイヤ「アイスガード6 iG60」、右(白プリウス)はオールシーズンタイヤ「ブルーアース4S AW21」を装着

 最初にスタッドレスタイヤであるアイスガード6を装着したプリウスで走行します。タイヤサイズは195/65R15 91Qです。

 当然ですが、雪道では何の苦労もなく止まり、そして曲がります。ESCをカットして走っても、横方向の滑りが穏やかでコントロール性も高く、安心してドライビングが可能です。

 次に、オールシーズンタイヤのブルーアース4Sを装着したプリウスに乗り換えます。タイヤサイズは195/65R15とアイスガード6と同じですが、91Hとロードインデックスと速度レンジが異なります。
 
 スノー路面では、スタッドレスタイヤと遜色のない走りを見せます。とくに横方向のグリップが高く、パイロンスラロームでのフィーリングもほとんどスタッドレスと変わりません。直進時でのブレーキングやゼロ発進時の前後方向のグリップは、若干スタッドレスのほうが上に感じられましたが、それでもほぼ思いどおりに制動/駆動します。

 ただ、問題はここから。アイス路面に場所を移して走行したとき、オールシーズンタイヤの弱点が明らかになりました。

 スタッドレスタイヤ装着車の場合、20km/hで進入し氷盤路面でブレーキを踏むと、ABSの作動とともにギュギュギュッと鳴きながら、だいたいブレーキを踏んでから8mくらいの距離で止まります。停止からの発進も、タイヤが滑りながらもグリップして加速していきます。

 オールシーズンタイヤは、ブレーキを踏んでもツーっと滑っていきます。ABSの介入も遅く、なかなか止まりません。同速度でアイス路面に進入しても、感覚的にはスタッドレスの倍以上滑っていく印象で、イメージした場所で止まらない「怖さ」も感じます。また停止からの発進も難しく、さらに加速してからハンドルを切っても、横方向には曲がっていかずにクルマはまっすぐに進んでいきました。

※ ※ ※

 このように、オールシーズンタイヤはけっして「1年中、どんな路面でも走れる万能タイヤ」ではなく、アイス路面では止まらないという大きな弱点を持っています。

 北海道や東北、日本海側の、毎年必ず雪の降る地域に住んでいる人には、当然、冬季にスタッドレスタイヤの装着が必要になります。

 だからといって「オールシーズンタイヤは都会に住むユーザー向け」と断定するのもまた、違います。都心でも、一度雪が降ってしまうと、日の当たりにくい路地などでは1週間くらいアイスバーンになってしまう道もあります。そういう道路の近く、とくに坂の多いところに住むドライバーには、オールシーズンタイヤはオススメできません。

 ただし、オールシーズンタイヤには「1年中履き替えがいらない」というメリットもあります。とくにマンションに住む人にとっては、交換したタイヤを保管する場所がいらないということは魅力的です。履き替え時の手間やお金もかかりません。

 現状、非降雪地域に住むドライバーで、冬もサマータイヤを履いたまま過ごしている人が多いことを考えれば、オールシーズンタイヤを選んだほうが安全ということも言えます。

 また降雪地域に住むドライバーも、サマータイヤの代わりにオールシーズンタイヤを選択するという方法もあります。そうすると、スタッドレスタイヤからサマータイヤに履き替えた直後に雪が降って困った、ということもなくなります。

※ ※ ※

 注目が集まっているとはいえ、まだ一般的にはあまり知られていないオールシーズンタイヤ。ひとことでオールシーズンタイヤといっても、商品によってサマータイヤ寄りなのか雪道性能重視なのかがあるのもまた、難しいところです。

 たとえばミシュラン・クロスクライメートのキャッチコピーは「雪も走れる夏タイヤ。天候を問わない走り、買い替え時まで続く安心感」。ダンロップ・オールシーズンMAXXは「急な雪にも慌てない 長持ち夏タイヤ」と、サマータイヤとしての性能を全面にアピールしています。

 対してヨコハマ・ブルーアース4Sは「雪に強いオールシーズンタイヤ」、グッドイヤー・ベクターフォーシーズンズは「四季を通じて安定した走りを可能にする、オールシーズンタイヤ」となります。

 タイヤは、バランスの商品です。それぞれの商品にそれぞれ特徴があります。それはオールシーズンタイヤだけでなく、スタッドレスタイヤも、そしてサマータイヤも同様です。

 決してカー用品店や自動車ディーラーだけにまかせるだけでなく、自分のカーライフをよく考え、メリット・デメリットを見極めた上で、タイヤを選びたいところです。

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8件のコメント

  1. ピレリタイヤは2019年以前からオールシーズンを出していて、ランドローバーやボルボの純正装着にもなってるけど、一切触れられていない。コンチネンタルタイヤもう気になっていたけど、触れられていない。
    もっと幅広い視野で取材、記事を書いて下さい。

  2. オートバックスにもプライベートブランドでオールシーズンタイヤ有るけど、
    性能はどうなんだろう

  3. 聞いた話しだけど、米国だと オールシーズンを推奨乃至義務化してる州が有るとか無いとか? ロッキーの近所のトコロだッたかなー?まぁ グッドイヤーが熱心になるワケよね。

  4. オールシーズンタイヤと夏タイヤの比較もしてほしい

  5. 九州には、オールシーズンタイヤを万能だと勘違いして購入してる人が沢山居ます。
    サマータイヤで雪道を平気で走ってる人も居ます。
    事故が起きてからじゃ、遅いのにね。

  6. 豪雪でも寒冷でもないけど、タイヤは夏冬で替えている。問題は、替え時。
    クリスマスの頃まで、坂に落ち葉があって、ぬれ落ち葉で滑る。冬タイヤの方が滑るので、年末まで夏タイヤを履いている。その前に雪が降ることがある。
    オールシーズンって、ぬれ落ち葉での滑り具合はどうだろう?
    これがノーマル並みに滑らないなら、夏タイヤはオールシーズンにしたいな。入手できるなら(バン用のオールシーズンが無い・・・ここ数年探していないので、今は出たかな)。

  7. 『オールシーズン中途半端』なタイヤが正式名称かも。

  8. ミネルバというオールシーズン履いてます。住んでいるところは坂道多めの所です。
    関東の先日の降雪で路面はアイスバーンでしたが不安無く走れました。サマータイヤではゴムがカチカチに硬くなる温度でも、オールシーズンタイヤは硬くなりませんね。

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