街中を戦車が走る!? 北海道に存在する「戦車道路」の正体とは
戦車は、1両で乗用車数十台分に匹敵する重量があり、その重さは想像を絶します。しかし、日本には戦車が走ることが可能な公道もあり、道路の種類によって大きく強度が変わります。今回は、意外と知らない日本の道路の種類を紹介します。
10トントラック約5台分! 50トンの戦車が走っても壊れない道路って?
日本にはその名の通り、戦車が走る「戦車道路」という道があります。北海道千歳市にあるこの道路は、総延長約10km、約40トンから50トンもの戦車が移動しても耐えられるような「コンクリート道路」になっています。
ちなみに、戦車道路は住宅街を通る道路で、一般人の立ち入りや乗用車での走行もできる、れっきとした公道です。この道路は、何のために使われているのでしょうか。
戦車道路はC経路とも呼ばれ、1974年から1982年、そして1989年から1991年の間に、約5億円の費用をかけて「C経路整備事業」として整備されました。
北海道千歳市を東西に横断するように作られ、その東側には陸上自衛隊の「北海道大演習場 東千歳地区」、西側には「北海道大演習場 千歳地区」があります。戦車道路は、演習場の間を自衛隊の車両が移動するために整備された道路なのです。
ちなみに、北海道大演習場はひとつの演習場ではなく、札幌市、北広島市、恵庭市、千歳市の複数の自治体に点在する演習場となっています。名前としては「北海道大演習場」ですが、実際には千歳地区や東千歳地区のように、いくつもの演習場によって構成されています。
戦車道路は、演習の内容や目的に応じて、自衛隊の車両が通行できるように整備された道路なのです。
戦車をはじめ、自衛隊には重たい車両が数多くあります。そのために戦車道路は頑丈に作る必要があり、コンクリート道路となったのです。しかし、戦車道路のようなコンクリートの道路は、日本にそれほど多くありません。
日本の道路は、おもに「アスファルト」と「コンクリート」、そしてアスファルト舗装の工程を簡単にした「簡易舗装」、砂利道などの「未舗装」の4種類に分けられます。
国土交通省の道路統計年報および一般社団法人日本セメント協会の資料によると、高速道、一般道、都道府県道のなかで、もっとも多いものが「アスファルト道路」のようです。
その割合は2012年時点で、高速道路で約94%、一般道で約87%となっています。一方、戦車道路のようなコンクリート道路は、全体の約5%程度にとどまっています。
戦車も走れるほど頑丈なコンクリート道路ではなく、アスファルト道路が普及している理由はどこにあるのでしょうか。
アスファルト道路とコンクリート道路の違いについて、骨材などを製造するプラントの施工管理者は、以下のように話します。
「コンクリートは確かに頑丈ですが、品質管理が重要となります。固まるまで時間がかかるため、その間に雨が降ればブルーシートでコンクリートを覆う場合もありますし、道路であれば人が入らないように閉鎖する必要もあります。
アスファルトは施工時に高温となるため取り扱いに注意が必要ですが、すぐに固まるため、コンクリートのような工事中の長期間にわたる管理がいりません。また、アスファルト道路は排水性が高いですが、コンクリート道路は排水性が悪いといわれます。
アスファルト道路は、黒くゴツゴツとした見た目をしていますが、コンクリート道路はアスファルト道路に比べると明るかったり、灰色がかっているという特徴があります」
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アスファルト道路のメリットは、施工が簡単で安く早くつくれる、という点です。工事をしても数時間後には通行できることもあり、都市部など交通渋滞が頻発する地域では、アスファルト道路の方が向いているといえます。
しかし、柔らかく変形しやすいというデメリットがあります。トラックやトレーラーなどの大型車が頻繁に通る場所では、轍ができたり、ひび割れてしまうこともあります。価格が安く、補修が簡単とはいえ、大型車が通る道路には不向きです。
一方、コンクリート道路は、地面に鉄筋を入れるなど、アスファルトに比べて高価になるとされています。また、コンクリートは固まるまでに時間がかかるため、長期間道路を通行止めにする必要があります。
しかし、アスファルト道路に比べて非常に頑丈というメリットがあります。アスファルトのような頻繁な補修も必要ないとされるため、ライフサイクルコストも低く抑えられます。
こうした特徴から、戦車道路のほかにも、重機が動き回る工場の敷地、空港など、乗用車よりも重たいクルマや乗り物が移動する場所に使われています。
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