【トヨタ20年ぶりの自社開発スポーツカー】新型「GRヤリス」の奥深い魅力とは
トヨタが新型「ヤリス」をベースに開発した新型「GRヤリス」。標準モデルの5ドアハッチバックから3ドアハッチバックに変更するなど、さまざまな部分に手を加えられています。そのプロトタイプモデルを試乗してわかった奥深い魅力とは、なんなのでしょうか。
新型ヤリスとは全然違う? GRヤリスの凄さとは
2017年、18年ぶりにWRCの復帰を果たしたトヨタ。WRCへの参戦理由は「勝つ事」と「もっといいクルマづくり」のためです。
GRカンパニーの友山茂樹プレジデントは「モータースポーツ活動で得たノウハウや知見、人材を車両開発に直接的に投下していくのが、我々のクルマ作りの基本です」と語っていますが、ズバリWRCの知見を盛り込んだロードカーが「GRヤリス」になります。
じつはこのGRヤリス、1999年に生産終了した「セリカ GT-FOUR」以来、トヨタとして20年ぶりのスポーツ4WDモデルです。
開発を担当した齋藤尚彦氏は「セリカGT-FOURをやめて以降トヨタはスポーツ4WDの技術・技能を失っていました。失った20年を取り戻すためには『モータースポーツから学ぶ』ことが最短の近道であると考えました。さらにトヨタがもっとも苦手とする『少量生産』への挑戦もおこなっています」と語っています。
今回、2010年1月に開催する東京オートサロン2020でのワールドプレミアムに先駆け、詳細の一部発表に加えて、プロトタイプに試乗することができました。
開発コンセプトは「Strong Sport Car」と単純明快で、具体的には「次期WRCホモロゲモデル」、「素のままでもローカルラリーで勝てるパフォーマンスを備える」、「誰でも購入可能なスポーツモデル」だといいます。
その実現のためには「高い目標」と「課題の明確化」をおこなったとし、クルマ作りもトヨタのさまざまなカンパニーと連携しながら開発をおこなう「クロスファンクションチーム」を実施。これらトヨタ×TMG(トヨタモータースポーツ有限会社)×TMR(トミ・マキネン・レーシング)と3極連携で開発をするやり方は、WRCのマシン開発に近いそうです。
外観デザインは、ベースの新型「ヤリス」にはラインナップされていない3ドアハッチバック、それも単純にドアの枚数を減らしたのではなく、ボディライン自体が異なります。
これは空力を考慮した“機能”のためです。またフェンダーも大径タイヤを装着するためにワイド化されており、結果としてノーマルよりもグラマラスなスタイルです。
ちなみに軽量化のためにこのクラスでは贅沢なカーボン製ルーフ、アルミ製ボンネット/ドアを採用するマルチマテリアルボディとなっています。
内装デザインは、インパネ形状など基本的な部分は標準モデルの新型ヤリスと共通ですが、専用のステアリングやメーター、スポーツシートを採用。
全体的なまとまりは非常にいいのですが、個人的にはメーターはもう少し遊んでもよかったと感じました。シフトレバーの前には前後駆動力配分を変更可能なドライブモードスイッチも加えられています。
また、JBL製オーディオシステムや運転支援デバイス、大人が乗っても似合うインテリアコーディネイトなど、日本のスポーツカーが苦手だった部分に関しても抜かりはないようです。
パワートレインは、GRヤリス用に新開発された1.6リッター直列3気筒ガソリンターボエンジンと6速MTの組み合わせになります。
詳細なスペックは未公表ですが、専用エンジンブロック/シリンダーヘッド、ボールベアリングターボ、排気バルブの大径化などが採用されており、出力はもちろん、クラス最軽量/最小サイズも特徴だそうです。
前出の齋藤氏によると「これもWRCからのフィードバックで出力/レスポンス/軽量化にこだわりました」と説明します。
AWDシステムは、スバル「WRX STI」や三菱「ランサーエボリューション」のような複雑な機構ではなく、シンプル/軽量化にこだわったハイレスポンスカップリングを採用。
前後駆動配分はアクティブに変更できますが、3つのドライブモード(ノーマル 60:40、スポーツ 30:70、トラック 50:50)がセレクト可能です。
プラットフォームは、標準モデルの新型ヤリスと同じくGA-Bながらリア部分は専用開発となっています。
サスペンションは、フロントがストラットでリアはマルチリンクの専用品。ブレーキは、対向ブレーキキャリパー+大径ローター、タイヤは225/40R18サイズのミシュラン・パイロットスポーツ4S、ホイールは鍛造のBBS製が装着されています。
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