ダウンサイジングターボに限界はある? 小排気量でもハイパワー化は可能なのか?
ダウンサイジングターボの意外な恩恵
では、なぜダウンサイジングターボが主流となったのでしょうか。
そこには、段階的に厳しくなる排出ガス規制に対応するための苦肉の策だったという側面があります。
2010年代初め、欧州メーカーの多くは、日系メーカーなどと比べてハイブリッドカー(HV)やEV、PHEVの開発には消極的でした。
それは、ストップ&ゴーの多い日本の道路環境とは違い、欧州では高速移動が多いため、ハイブリッドのメリットが日本ほど多くなかったことが挙げられます。そこで、電動化を図るよりも既存のエンジンを改良する(=ダウンサイジングターボ化)ことで、当面の規制に対応しようとしたのです。
必要に迫られて実現したダウンサイジングターボエンジンですが、意外な恩恵もあります。それは、軽量化による総合性能の向上です。
クルマにおいて軽量化は、ハンドリングや加速性能の向上、燃費の向上などあらゆる部分でメリットが多くあります。クルマのなかでも最大の重量物がエンジンであることから、小排気量化によるエンジンの軽量化は、性能向上に非常に寄与します。
上で紹介したメルセデスAMGのハイパフォーマンスカーでも、4リッターV型8気筒エンジンでありながら、500馬力を超えるパワーを発揮します。にもかかわらず、これまでの6.3リッターエンジンよりも大幅に軽量化しているため、運動性能は飛躍的に向上することになりました。
また最近では、「メルセデスAMG A45」のように、2リッターの4気筒エンジンながら、421馬力もの最高出力を発揮するモンスターエンジンも登場しています。こうしたトレンドはまだまだ続くのでしょうか。
ハイパフォーマンスカーにおけるダウンサイジングターボの恩恵について、欧州メーカーで高性能車の開発を担当するエンジニアは次のように語ります。
「より低排気量でよりハイパワー化が進むかといえば、答えはYESです。たとえばF1のマシンは、モーターの出力が加わるとはいえ、1.6リッター程度のエンジン(パワーユニット)で1000馬力近い最高出力をひねり出しているので、技術的にはまだまだ向上する余地があります」
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ダウンサイジングターボは環境性能のみならず、運動性能という面でもメリットがある技術であり、これからも進化する余地がありそうです。一方で、別の業界関係者は「運動性能という面から見ても、いずれ電動化が求められる時代がくる」と語ります。ハイパフォーマンスカーのパワートレインは今後さらに注目されることでしょう。
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