トヨタがホンダの本気に焦り? 「ヤリス」で打倒「フィット」狙う両者の思惑とは

初代モデルからライバル関係にあったホンダ「フィット」とトヨタ「ヴィッツ」。ともに2019年10月に4代目となる新型モデルを発表しましたが、フィットは個性豊かなグレード展開をおこない、ヴィッツは海外名称と同じ「ヤリス」に車名変更するなど、両車さまざまなトピックスを持っていますが、なぜあえて発表・発売時期が重なったのでしょうか。

フィット発表前のヤリス発表はトヨタの先制攻撃?

 2019年10月23日に開幕した東京モーターショー2019。今回のショーで大きな話題となったのはホンダ新型「フィット」の世界初公開で、会場は大きく沸き立ちました。その新型フィット発表の1週間前となる10月16日、トヨタは新型「ヴィッツ」を海外名称の「ヤリス」に変更して発表します。ともに発売は2月を予定しています。

 初代モデルからライバル関係だった両車は、なぜ同時期の発表・発売となったのでしょうか。

ライバル対決を制すのはどっち? トヨタ新型「ヤリス」(左)とホンダ新型「フィット」(右)
ライバル対決を制すのはどっち? トヨタ新型「ヤリス」(左)とホンダ新型「フィット」(右)

 ヤリスという聞き慣れない名前で登場したこのモデルは、ヴィッツの後継モデルであり、このヤリスという車名は以前から海外で使われているため、実質的に日本では新型ヴィッツと呼べるものです。

 最近では、トヨタ「プリウス」や「アクア」のようなハイブリッド専用モデルの影に隠れていたヴィッツですが、10月16日に20年間続いた名前を、欧州名であるヤリスと変更、新型モデルとして発表されたのです。

 トヨタの豊田章男社長は、ヤリスの発表時に次のようなコメントをしています。

「ヴィッツを始めとするひと昔前までのコンパクトカーは、主にセカンドカーとして使われていました。しかし、今回の新型ヤリスはコンパクトカーの概念を打ち破るために、ファーストカーとしても乗れるクルマにしたいという想いで車名を『ヤリス』に変えました」

※ ※ ※

 もちろん、単なる名称変更ではなく、骨格部分から見直しが図られ商品力も大幅に向上しました。しかし、何よりトヨタの気合いを感じるのが、「10月16日」という発表タイミングです。

 ヤリスのような量販車は、「発表」と「発売」のタイミングが同一であることが多いのですが、新型ヤリスの発売は2020年2月とやや時間があります。

 これに対して、大手広告代理店の関係者は次のように分析します。

「新型フィットが2019年10月23日の東京モーターショーで発表・発売されることは業界内では既定路線となっていました。クルマのなかでも単価の低いコンパクトカーは、購入までの検討期間が比較的短いため、10月にフィットが発売されてしまうと、新型ヤリスが発売する2020年2月には見込み客の多くがフィットに流れてしまうことをトヨタは懸念したのではないでしょうか。

 発売自体を前倒しするのは、販売店側の準備や生産体制構築の問題もあり難しいため、発表だけ東京モーターショーの前におこなうことになったのだと考えられます」

※ ※ ※

 新型フィットは電動パーキングブレーキに不具合が生じたこともあり、結果的に2020年2月の発売となりましたが、トヨタの「先制攻撃」にホンダはどのように反応するのでしょうか。

 一方のホンダは、トヨタの攻勢にも動じることなく横綱相撲のかまえを見せています。ヤリスやマツダ2のように、海外名称に統一する動きがあるなかで、フィットは海外で「ジャズ」という車名で販売しています。他車と同様に海外名称に変更することはないのでしょうか。

 ホンダ広報部は、「『フィット』の名前を変更することはない」と淡白で、ヤリスの発表が新型フィットの発表と重なったことについては「小型車市場が活性化していいこと」と冷静です。

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