盗難事件があった「個人間カーシェア」はどういう仕組み? 依然残るリスクや問題点とは

個人間カーシェアが「営業行為」にあたらない理由とは

 個人間カーシェアをもう少し深堀りしてみましょう。貸し手と借り手が共同使用契約を結ぶことが、個人間カーシェアの基本です。つまり1台のクルマを複数の人が時間を区切って共同で使用することであり、営業行為ではない、ということです。

 ですが、個人間カーシェアをおこなっている大手企業の事例を見ると、ディー・エヌ・エーの「Anyca(エニカ)」や、ガリバーを運営するIDOMの「GO2GO(ゴーツーゴー)」などでは、ネット上で貸し手が利用金額を提示し、借り手である利用者がその金額を支払ってクルマを借りています。

 これは法的に、利用者が共同利用する際の経費を負担している、という解釈になります。AnycaやGO2GOは、マッチングネットワークを提供している、という建て付けです。

 ただし、こうした分野を所管する国土交通省では、個人間カーシェアについて総括的な法整備を現時点ではおこなっておらず、許認可制度はありません。そのため、マッチングネットワークを提供する各事業者は個別に、国土交通省を交渉することで事業の形式を作っているのが実情です。

個人間カーシェアが抱える課題とは
個人間カーシェアが抱える課題とは

 こんな話を聞くと、なんとも分かりにくく、理屈っぽい、と感じる人が多いはずです。そこまでして、どうして個人間カーシェアが必要なのか、と思う人も多いのではないでしょうか。

 筆者(桃田健史)は日本を含め世界各地で、カーシェアやライドシェアについて定常的に取材をしています。AnycaやGO2GOについても、立ち上げ期からそれぞれの事業責任者と何度も意見交換をしています。

 Anycaはすでに4年間の実績があり、クルマの登録台数は約8000台、会員数は約25万人です。

 そうしたなかで、個人間カーシェアというクルマの新しいビジネスモデルが生まれることは、社会のなかでさまざまな可能性が広がると感じます。

 趣味の分野での楽しみが増えて、人生がより楽しくなる。また、公共交通が不便な地域での問題解決の一助になる可能性もあります。

 一方で、事故のリスクは当然あります。実際、Anycaでも軽度な車両の損傷などが、事例は少ないにしても一定数発生しています。

 そうしたリスクについて、Anycaの場合、損害保険大手のSOMPOホールディングスとディー・エヌ・エーが2019年2月に設立した新会社のもとで、貸し手と借り手の安心・安全を十分に考慮した個人間カーシェアの運用を始めています。
 
 個人間カーシェアは事業形態としては、まだまだ『赤ちゃん』です。そのため、今回発生した盗難事件など、社会の中で起こり得るさまざまなリスクに対して、さらなる予防策が必要だと感じます。

 ただし、あまりにも法的にがんじがらめにするのではなく、適時適所で対応することが個人間カーシェアの潜在的な可能性を維持することにつながると思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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