3ナンバー化したトヨタ新型「カローラ」 大型化でも後席が狭くなった理由とは
走行性能はどう進化した?
新型カローラのエンジンは、ガソリン車(1.8リッター/1.2リッターターボ)と1.8リッターエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車の3種類で、従来型と比べると排気量と動力性能を高めました。
その理由は、新型カローラの車両重量が増えたからです。主力グレードが1300kgに達するため、従来型に比べると200kgほど重く、従来の1.5リッターでは十分な動力性能を得られず、排気量を拡大するとともに1.2Lターボも加えています。
また、トランスミッションは、1.8リッターがCVT(無段変速AT)のみで、1.2リッターターボは6速MT専用です。
新型カローラセダンとツーリングがこのエンジン設定になっている理由は、先に述べたように、まずボディが重くなったからです。

また、価格を抑える目的もあります。欧州車では、小排気量ターボをベーシックエンジンとして定着させましたが、トヨタのソロバン勘定では、1.2リッターターボは高コストになりやすいのでしょう。
そこで2ZR-FAE型1.8リッターエンジンを搭載しました。このエンジンは2009年に発売された2代目「ウィッシュ」などにも搭載され、長年にわたって使われていることから、いまでは製造コストも下がりました。
このメリットを生かして、1.8リッターを新型カローラのベースエンジンに位置付け、十分な動力性能と割安な価格を両立させたのです。
1.8リッターの性能は、最高出力が140馬力、最大トルクは17.3kgmです。1.2リッターターボの最高出力は116馬力、最大トルクが18.9kgmです。
この数値を見る限り、1.2リッターターボの方が実用回転域のトルクが高く、CVTに適するともいえるでしょう。逆に1.8リッターは高回転域まで良く回るので、6速MTが相応しいかも知れません。
2WD車のWLTCモード燃費は、1.8リッターが14.6km/L、1.2リッターターボが15.8km/Lです。ハイブリッド車は29km/L(W×Bは25.6km/L)です。1.2リッターターボと1.リッターLの数値は似ており、ハイブリッドは大幅に向上します。
駆動方式は、ガソリン車のどちらの排気量でも前輪駆動の2WDのみで、ハイブリッドは2WDと後輪をモーターで駆動する4WDのE-Fourを選べます。従来型の1.5リッターノーマルエンジンには4WDがあり、カローラスポーツも1.2リッターターボの4WDを選べます。これに比べて新型は4WDを選びにくいのが現状です。
価格は、1.8リッターを基準にすると、1.2リッターターボは装備の違いを補正して14万円ほど高いです。ハイブリッドは約44万円の上乗せです。
そうなると1.8リッターが割安で、「1.8S」(セダン・213万9500円)、あるいは1.8リッターの「W×B」(セダン・231万5500円)が推奨グレードになります。1.2リッターターボの「W×B(6速MT)」は240万円を超えます。
カローラの戦略として、まずは割安な1.8リッターエンジン車で幅広いユーザーをカバーします。コストが少し高い1.2リッターターボは、敢えてスペシャルティな6速MT専用のパワーユニットとして、スポーティな最上級のW×Bに搭載しました。これはクルマ好きに向けた仕様で、新型カローラのチャレンジでもあるでしょう。
ハイブリッドは価格が高めですが、走行距離が1年間で1.5万km以上に伸びるユーザーにはメリットがあります。加速が滑らかでノイズも小さく、上質な走りも味わえます。
装備については、衝突被害軽減ブレーキが進化しました。夜間の歩行者や自転車の検知が可能になり、標準装着あるいはオプションで、後方の車両を検知する機能も装着できます。
DCM(専用通信機)も備わり、SOSの発信がおこなえて、エアバッグが展開したときなどは、自動的にオペレーターに繋がって救急や警察の手配を依頼することも可能です。
車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどの運転支援機能も備わるほか、ディスプレイオーディオも装着され、LINEを利用したカーナビなど、通信機能が従来以上に向上しています。
今では背の高い軽自動車、コンパクトカー、ミニバンが売れ筋で、後席の使用頻度が高いユーザーは、この3つのカテゴリーを選びます。
そうなるとセダン&ワゴンの価値は、背の低いボディによる低重心です。車両重量や空気抵抗も軽減され、走行安定性と乗り心地がバランス良く高まって動力性能も向上できます。
背の高いクルマが主流になった現在では、セダン&ワゴンは個性派に位置付けられ、優れた安定性と乗り心地、つまり安心と快適が特徴になります。そこでカローラセダン&ツーリングも、上質な走りを求めて3ナンバー車になったわけです。
本当ならばヴィッツのようなコンパクトカーとは違う「上級の5ナンバープラットフォーム」を造り、カローラに採用して欲しかったですが、今は環境性能、安全性能、自動運転技術なども開発しなければなりません。日本にピッタリな上級5ナンバープラットフォームは、無理な願いだったようです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。































