日産「GT-R」はなぜ毎年進化する? 日本が誇るGT-Rの次期型のあるべき姿とは
日産「GT-R」は日本が世界に誇る名車です。そんな現役モデルが登場したのは、いまから12年前ですが、毎年のように商品改良を続けています。決して販売台数が見込めるクルマではないのに、なぜ進化し続けるのでしょうか。
日産「GT-R」の進化は止まらない?
日本が世界に誇るハイパフォーマンスカーといえば、多くの人は日産「GT-R」をイメージするのではないでしょうか。
そんなGT-Rの現行世代が発売されたのは2007年12月。なんと12年近くも前なのです。フルモデルチェンジもなく約12年間も同じ世代のクルマを売り続けるのは、昨今の日本車としては異例なことです。
一方で、フルモデルチェンジがないとはいえ改良を重ねて着実に進化しているのも、また国産車では異例といえます。なぜ、GT-Rは毎年のように進化を続けるのでしょうか。
2007年のデビュー以来、GT-Rに施された改良は小さいものまで含めると11回にも及びます。現行GT-Rの当初の開発責任者を務めた水野和敏氏は、デビュー時に「毎年進化させる」と公言していました。
それは、モデルライフ途中の2017年モデルから開発責任者が田村宏志氏に交代しても、2015年と2018年を除けば毎年何らかの改良がおこなわれています。
2015年に改良がおこなわれなかったときは、その前年と翌年に大幅な進化を果たしていて、日産は「大掛かりな改良の合間だったので細かい改良を施さなかった」と説明します。
また、2018年も変更がありませんでしたが、翌年2019年には標準車のターボチャージャーの変更やトランスミッション制御の進化に加え、「GT-R NISMO」が大改良を受けました。
ボディにカーボン素材の採用、ターボチャージャーの変更、世界トップクラスの性能を誇るカーボンセラミックブレーキの採用など大幅な進化で性能をアップしています。
ところで、GT-Rは決して売れ筋モデルではありません。年間の販売台数は全世界で見ても、年間で2000台から3000台程度です。
車両価格が高いとはいえ、車体からパワートレインまで専用設計かつ、度重なる進化で開発費も多くかかっているので採算的にも楽ではないでしょう。しかし、毎年のように進化しているのはどうしてなのでしょうか。
ひとことでいってしまえば「進化をとめるとライバルに置いていかれる」ということに尽きます。
GT-Rのようなハイパフォーマンスカーは性能がすべてです。日産の高い技術力を世間に対してアピールする役割を担っているので「性能面で時代遅れになる」ということは許されません。
世界の頂点付近にいるハイパフォーマンスカーの性能は日々進化しているので、さすがのGT-Rもデビュー時のままでは全体のなかでのポジションがどんどん下がってしまいます。そこで、着実に進化を重ねて速さを極めているのです。
GT-Rは、デビューから12年近くもたつのに、いまだに世界に名だたるハイパフォーマンスモデルに対して性能が大きく劣っていないのは、じつは凄いことだといえます。
決して販売台数が多くないGT-Rにこれだけの手間がかけられるのは、日産の意地といえますが、同時にブランドイメージを高く保つためなのです。
世界の多くの国において、GT-Rはクルマ好きの憧れで、「GT-Rを買うことはできないけれど、憧れのGT-Rがあるから日産車を買う」という人は多いといいます。
これは「NSXがあるからホンダ車を買う」とか「WRCで大活躍しているからスバル車を買った」といった感覚。クルマ好きにとって、そのメーカーに高性能車のイメージリーダーが存在する意味は大きいからこそ、GT-Rは世界の最前線に立っていないといけないのです。
また、GT-Rのユーザーに対しては年々性能を高めることで、購入意欲をあおる狙いもあります。どんどん性能を高めていくことで、GT-RからGT-Rへの乗り換えを促進するというわけです。
日産の販売店スタッフは「GT-RからGT-Rへの乗り換えは、かなり多い」といいます。それを裏付けるのが、大規模マイナーチェンジでフロントマスクやダッシュボードの意匠を変更した2017年モデルが発売されると、買い変え需要が多く発生したことで、2017年には前年を大きく上回る1033台が日本で販売されました。
ちなみに、GT-Rの進化にとって大きな分岐点といえるのは2013年のGT-R NISMOの登場です。
走行性能に特化したハイスペックモデルのGT-R NISMOが登場し、サーキットでの限界性能を求める人にはGT-R NISMO。それ以外の人には、通常のGT-Rとキャラクター分けが実現しました。
その結果、通常のGT-Rは乗り心地を改良して日常の快適性を高め、超限界粋までは求めないユーザーも含めてより多くの人に満足してもらえる味付けとなったのです。
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