トヨタのひとり勝ち? トヨタ車がたくさん売れる意外な理由と今後の不安とは

全車種販売が販売低下の原因に? 今後のトヨタはどうなる?

 販売面で気になるのは、日産です。国内で2100店舗を展開しますが、2018年度の国内販売は60万台なので、1店舗当たりの販売台数は286台です。

日産の売れ筋モデル「セレナ」はオラオラ顔にチェンジ
日産の売れ筋モデル「セレナ」はオラオラ顔にチェンジ

 しかも国内で販売される日産車の3分の1以上が価格の安い軽自動車なので、車両販売による売り上げは下がります。日産は、国内のメーカー別販売ランキングも5位と低いです。

 2018年度における小型/普通車の販売ナンバーワンは日産「ノート」で、ミニバンの1位も日産「セレナ」でしたが、メーカー別の順位は5位ですから、日産車の販売は、これらの限られた売れ筋車種に集中しているのです。

 こうなった理由は、最近の日産が国内向けの商品開発に力を入れず、海外中心になったためです。いまの日産の世界生産台数に占める国内販売比率は11%ですから、トヨタの18%、ホンダの14%と比べてもさらに低いです。

 ただし、過去の販売ランキングを振り返ると、2007年頃までは、日産は安定的にトヨタに次ぐ2位に位置していました。

 業績を悪化させた日産は、1999年にルノーと資本提携を結びましたが、2000年代の中盤までは、国内市場に合った小型車やミニバンを積極的に発売していたのです。

 2002年には3代目「マーチ」、2代目「キューブ」、2代目「エルグランド」、2003年には2代目「プレサージュ」、2004年には「ティーダ」と初代「ラフェスタ」、2005年は初代ノートと3代目「ウイングロード」というように、さまざまなモデルが登場しました。

 ところが2008年末にリーマンショックが発生すると、国内市場に対する積極性が急速に薄れ、新型車の発売が2年に1車種程度に滞ります。また2000年代には、小型/普通車の売れ行きが下がる一方で、軽自動車が販売比率を拡大させ、ホンダ/スズキ/ダイハツの順位が繰り上がりました。その結果、日産が5位に転落したのです。

 これに伴って販売店舗数も減りました。日産は2003年には全国に3100店舗ありましたが、2008年は2800店舗に減り、いまでは2100店舗です。

 この店舗数や販売台数の縮小と時期的に一致するのが、販売系列の撤廃です。日産では1999年に全店が全車を扱うようになり、2007年には系列も撤廃して全店の外装が同じ色彩になりました。

 ホンダは、2003年の時点では2400店舗でしたが、いまは2200店舗に縮小しています。2006年に開始された全店併売の際に、ディーラーの名称がホンダカーズに変更され、その後に売れ行きが落ち始めます。

 日産とホンダを見る限り、国内で売られる新型車の減少や国内販売の落ち込み、国内販売比率の低下は、販売系列の撤廃と連動して進んでいます。

 こうなるとトヨタにも不安が生じます。東京地区では2019年4月に、トヨタの直営4系列をトヨタモビリティ東京に統合しましたが、2020年5月にはほかの地域も全店が全車を扱うようになるからです。

 トヨタの場合、大半の地域のディーラーがメーカー資本に頼らない独立した販売会社なので、東京のような販売系列の統合は難しいです。しかし、全店が全車を扱えば系列の意味が薄れ、トヨタの販売会社同士の競争が激しくなるのは必至です。その結果、販売力の強い会社だけが生き残ります。

 全車種併売についてトヨタの販売店に話を聞くと、「全車を扱えば、お客様のニーズに幅広く応じられるから歓迎したい」という声が聞かれる一方で、「取り扱い車種が膨大に増えるため、商品知識が不十分になる心配がある」「店舗の廃止などリストラは避けられない」など、賛否両論があるようです。

 現時点でも、「プリウス」「アクア」「シエンタ」「C-HR」などといった売れ筋車種は、すでに全店が扱っています。今後全店が全車を扱う体制に本格移行した後、現在の専売車種となる「クラウン」「ハリアー」「カローラ」「ヴィッツ」などの売れ行きをいかに維持できるかが重要になるでしょう。

 とくにセダン市場は、実質的にトヨタが支えている状態ですから、クラウンやカローラの売れ行きが下がると深刻なセダン不足に陥ります。トヨタが日本の自動車産業に与える影響は、きわめて大きいといえます。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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16件のコメント

  1. 系列がなくなるトヨタは、販売店間の差が、価格差(値引き)になってしまう可能性がある。淘汰もしくは整理があるよなあ。ただ、系列の親会社が同じなこともあるので、メーカーに頼らず考えるだろう。この、「考える」が独立系の強さ?
    スバルって、スバリスト待ちみたいな気がする。それも重要だけど。

  2. 全ての車種を全ての店舗で購入できる利便性なら何でセルシオをレクサス専売にしたのだろうか?
    高級=セダンと言う思い上がりと顧客が寄せるトヨタへの信頼をレクサスに便乗させた結果がトヨタ系列の車種をレクサス化粧で売らなければならなくなった現実が物語っているだろ
    一人勝ちがろくな製品を送り出せないことを何でトヨタはレクサスを通じて学べなかったのか?

    • 国内はどうでもよくて、欧米でトヨタは、ランクル・ハイラック・サーフ等で有名なトラックメーカーで、横でついでにカローラやセリカを売っている会社と思われていた。追加ブランドは必須。VWだって、その成功を見て、20数年かけてAudiを単なるセカンドブランドからトップブランドに変更・作り上げたと思う。80とか90とか言っていた時代は、プレミアムでもなんでもなかった。(Audiが昔から技術力が高かったことは認めるけど。)ま、どこも似たもんだよ。フェートンもAudiで出していたら・・・・ブランドって重要よ。

    • えっ?あのA3もブランドなの?VWのお下がりのAWDでクワトロとかブランドに便乗して安物で逃げ切ろうとするトヨタのレクサス事業部そのものじゃないかよ
      謀り謀られるような売り手と買い手の関係にブランドなんかあるわけないだろ

    • 照り照り坊主様 企業グループ・メーカー・ブランド・OEM などの言葉の意味はご存知ですよね。
      VWグループって、VW・Audi・SEAT・シュコダ間のブランドイメージと車を作り分け、値段をつけている。Audiはお高いイメージを作り、儲けを出すブランドはAudiだけでいいくらいのグループ・ブランド戦略。日本市場のA3だけ言われてもね・・・(同じGのPorscheブランドなんかは無視して書いてます)。トヨタグループのレクサスとはブランドの育て方が違いますね。

    • 詳しいですね~歯車さん!それだけ詳しいとなると関係者か?所有権で輸入車を保有されてる方と推察しますが、自分は企業の戦略とかブランドもそうなのですが痩せ細った海老を厚い衣で骨太に見せる商いが嫌いなだけでして
      己が転がす車の諸元すら見ない者等を鴨にするようなブランドって長い年月で何を養ってきたのでしょうかね?
      実は自分も過去に2台だけ輸入車を所有権で各々6年所有しましたが、輸入車を止めた理由は車の問題ではなく売り方の問題で、車種に外装色に内装色を決めて手付金を渡す段階に至っても生産本国から日本に向けて出荷されているグレードや既に入国済みの私の意思とは反対のグレードで納期を理由に企業側の都合で私に妥協を迫ってきたり、これが貴方の仰有るブランドの暖簾分け企業の化けの皮と自分なりに解釈したしだいで以降は国産車を乗り継いでおります。
      因みに輸入車の一台は貴方の詳しい車種の血族です。
      かつて日産モーター系列でVWサンタナと言う車種が発売されてましたが、世間では生産効率が優先される中で横置きエンジンミッションの前輪駆動車が当たり前の世に縦置きエンジンの前輪駆動車は私には新鮮に感じられて実はこの車がアウディーデビューのきっかけになった車なのですよ

    • では20数年を具体的に書いてみ?歯車殿

    • 確かにハイラックスは日野生産だな
      だけどトヨタがトラックメーカーとはw
      だからそんな車音痴な富裕層をブランドで巻いて儲けてきたのが長年放置されてきたブランドなだけで育てたと言うのは違うだろ

    • 確かにトヨタの販売店の統合とレクサスのラインナップは同じ社として矛盾してるわな、そこにAudiとか歯車が噛み合わない書き込みが火に油だから余計にややこしい

    • AudiのIngolstadt本社工場(聖地)や、横にある博物館やサービスセンターに行ってください。イメージ戦略の一端がわかる。納車待ちで博物館で遊んでいる人に「〇〇様の車の準備ができました」というアナウンスがあり、大勢の見学者の前で賑々しく鍵と車を渡すショー。シュツットガルト(MB)の上から目線に比べ、そそられる演出。見せる・遊べる工場まで作ってイメージ作り。工場にメール送ったら有料で工場見学も手配してくれますよ。

    • 割り込んで申し訳ありませんがね、言っちゃ悪いがイメージより品質なんですよね、確かに外国車は発想は群を抜いてるけど、例えばAWDのジャダーが許容範囲とかね?まあーそれを抱き抱えて所有するのも仰る当たりの聖地?信者?の誓い?なんでしょうがw
      ただね~妙な所でエンコされると車歯様の言うショーも茶番になっちゃうんですよ
      トヨタも店舗統合の片隅でレクサス事業部は残すと言ってるし、どんな持て成しだろうが納車の鍵渡しショーだろうが本部の車種の化粧直しの車型では乗りきれない限界もあるでしょう
      私は入れ換え希望の車種がトヨタ店では取り扱いが無くなったので仕方無く紹介を経て同系列が運営するレクサス店に行きましたが、何で同じ会社でユーザー照会と紹介をしてんねん?てな事も思ったりしましたよw
      で、今更に何処でも何でも買えますよ~みたいな一見お客様視線も実は企業の都合丸出しの統合にはムカついてるんですよ
      それと先に書かれている方のA3の件ですが貴方はA3だけでは?みたいな事を書かれてるようですが?30年前の日産パルサー並の車を新型として世に送り出す聖地など他の車種も大したことないと思うのですがいかがでしょうか?
      ショーとか持て成しではなく次は是非にも各々の車型の諸元でその聖地から産まれ来る物の品質や便利性でAUDIの優れたところを書いてみてくださいね。

    • このサイトは、車好きな人の集まりで当然車の話(モデル毎で、品質より性能)が中心でのイメージで、販売の話題に乏しい。また、渡辺さんが国内だけの中途半端な記事書くので。つい熱くなりました。失礼。
      国内だけ見ているメーカはIsuzu/Daihatsu含めてもゼロ(除く光岡)で、世界中でなんとか儲けを出して原資を得ないと、次の車が作られなくなります。また、おもてなしで、「普通の方」が高価な車を買い、喜んでいただけるなら、安い投資と読みます。  打ち止めします。(品質って何?とかもありますが・・・)

    • そこまでブランド思考の販売を推すなら何で諸元がカタログの後書きのようなポジションに置かれているのか?
      派手な表紙ともてなしの艶消しになるからなのか?
      そもそも自分はトヨタの店舗統合に関して実質のトヨタで扱っていた車種を減らしてまでレクサスブランドに持ち上げてトヨタ系列で全車種を扱う利便性とか言ってる企業に疑問を抱いてコメントしたつもりなのだがね、それと普通の方とか、記者に対して中途半端とか、どんな敷居からこの記事のコメントに参じてきなさったのかな?

    • マヒューさん、失礼しました。おっしゃる通りです。話を戻します。
      メーカー本社が沢山日本に在って、国内市場の話をのんびりできるのは、日本の人口が1.2億人だから。少子化で市場は縮小。販売店も数が減る。限界はわかりませんが、系列統合は、都合というより必然。渡辺さんのなぜ統合なのの説明不足で。頑張った方じゃない?
      セルシオが出てきて、米国でレクサスはまあまあだったけど、その時国内無視だったので、別の例としてAudiが出てきました。それでも「かんばる」なのか、単に統合に踏み切れなかったのか。
      最後に、渡辺さんや私には少子化対策はできません。皆さん頑張ってください。またずれた? 打ち止め2

  3. レクサスの店舗って都会集中だよね?
    ベンツなんか全国平均に展開してるけどね、まあーこの辺りが輸入国産問わずダラダラ長い年月無駄な時間をやり過ごしておきながらそれを実績だのブランド商品とか履き違えてる会社の差だろうね。
    遠出が好きな俺らがベンツ400Dにしたのは実は全国に入庫できる店舗があるからだ。
    錆び付いたブランドなんか安心の種にもならんからね。

  4. うちにも通知とお客様センターの案内双方から系列が圧縮される旨の連絡は来たな。
    率直にそんなのどうでもいいから譲渡証に無駄なバウンド利益の販売会社を幾つも刻まんとメーカーからより近い立場で車両譲渡してくれたら自分で登録するにな~?と何時も思うけどね
    勿論それが販売店の利益なんだろうけどね、しかしながらこの方法で乗ってる系列会社の人も実際居るんじゃないの?
    企業のブランドの裏の顔なんて江戸川の鰻と浜名湖の鰻の面を見分けるより楽だと思うけどw

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