幻のスーパーカーが3台もあった!? バブル崩壊でお蔵入りした車3選
バブル期にはいまでは信じられないようなクルマが多く販売されましたが、なかにはもう少しのところでお蔵入りとなってしまった残念なクルマが存在します。今回は、そんな時代に翻弄されたクルマを3台ご紹介します。
お蔵入りしてしまった魅力的なクルマたち
日本がバブル景気だった昭和の終わりから平成にかけて、高額なクルマが飛ぶように売れていました。
しかし、なかにはバブル景気を背景に企画されたものの、バブル崩壊を受け、発売までもう少しのところでお蔵入りとなってしまった残念なクルマたちが存在します。
そこで、時代に翻弄されたクルマを3台ご紹介します。
●日産「MID4/MID4 II」
日産「MID4(ミッド・フォー)」は、研究開発を目的とした実験車両で、1985年のフランクフルトモーターショーで発表されました。車名はエンジンをミッドシップに搭載した4WDのスポーツカーを意味しています。
MID4の発表から2年後の1987年、東京モーターショーの日産ブースに、より市販化を意識して進化した「MID4 II」が出展されました。
MID4 IIのエンジンは最高出力330馬力のV型6気筒DOHCツインターボ「VG30DETT型」を縦置きに搭載。サスペンションはフロントにダブルウイッシュボーン、リアには「スカイライン」にも搭載された後輪操舵機構「HICAS(ハイキャス)」付きのマルチリンクが採用されていました。
内外装のクオリティは、すぐに市販化されてもおかしくないほどで、実際、市販化に向けた検討が、日産の役員を含めておこなわれていたといいます。
しかし、1987年当時、好景気ながら日産の財務状況は悪化しており、市販化実現には莫大な開発費用と工数が必要だったことから、結局、MID4の市販化を断念する経営判断が下されます。
市販化を持ち望んだファンの期待は叶わなかったものの、MID4の開発で培った技術の多くは、1989年に発売された4代目「フェアレディZ」や「スカイラインGT-R」に活かされました。
MID4は現在、神奈川県座間市にある「日産ヘリテージコレクション」にて保管・展示されており、見学を申し込めば実車を見ることができます。
●ヤマハ「OX99-11」
ヤマハがかつてF1エンジンを製造していたことはモータースポーツファンならご存知でしょう。しかしながら本格的に4輪車事業に挑戦しようとしていたことは、意外と知られていません。
それは、ヤマハが1991年に発表した「OX99-11」です。F1エンジンの開発で培った技術を活かしたスーパーカーとして開発され、ヤマハ初の4輪車となる予定でした。
シート前後に配置した2人乗りというバイクのような特徴的なデザインに加え、スペックは最高速度350km/h、静止状態から100km/hまでの時間は3.2秒と、現在のスーパーカーと比べても遜色ない性能となっていました。
ヤマハは1994年の発売をアナウンスし、イギリスでの生産も決まっていましたが、日本におけるバブル崩壊と世界的な経済変動の影響を受け、販売を断念。
現在は静岡県磐田市にある「ヤマハ・コミュニケーションプラザ」で動態保存され、イベントなどで走る姿を見ることができます。
●ジオット「キャスピタ」
日本のモータースポーツを黎明期から支えてきたレーシングカーコンストラクター「童夢」といえば、1970年代に製作された和製スーパーカー「童夢 零」のイメージが強いですが、1989年にもスーパーカーの開発に取り組んでいました。
いまでは信じられないことですが、このプロジェクトは下着メーカーとして有名な「ワコール」の主導によるもので、童夢と共同で「ジオット」という生産母体をつくり、設計開発は童夢が担当。
エンジンの開発はスバル(当時は富士重工業)がおこなうことになっていました。
「公道を走るF1マシン」をコンセプトに開発がおこなわれ、流麗な美しいデザインに加え、スバルとモトーリ・モデルニ社によって開発された「1235」と呼ばれる3.5リッター水平対向12気筒エンジンの搭載も決まり、車名も「キャスピタ」と発表されます。
しかし、1990年シーズンにF1へエンジン供給していたスバルでしたが、シーズン途中で撤退が決まり、同時にキャスピタへのエンジン供給も中止することとなり、童夢はパワーユニットの変更と、車体の大幅な設計変更を強いられます。
その後1992年にようやく完成にこぎつけ、走行テストも繰り返されましたが、すでに世の中はスーパーカーを受け入れられるような状況ではなく、1994年にプロジェクトは終了しました。
製作された2台のプロトタイプのうち1台は、現在、石川県の日本自動車博物館で保管・展示されています。
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今回、紹介した3台は、市販化が中止されて30年近く経過していますが、いまなお話題に上がることが多く、イベントなどでデモンストレーション走行や展示が企画されるなど、根強い人気を保ち続けています。
残念ながら世に出ることがなかったクルマたちですが、ファンの記憶に残り、そして愛されているといえるでしょう。
MID4 II なんか、いま市販化しても人気出そうだけど?