10分で死も? 子供の車内放置 親が目を離したときに起きる悲劇とは

わずか10分でも目を離せば、子どもに命の危険が

 今回の事故では「『わずか』10分離れたすきに」と報道されていたケースが目立ちましたが、10分「も」あれば、命を失う危険はすぐそこです。

エアコンをつけないと夏場は車内温度がグングン上昇する
エアコンをつけないと夏場は車内温度がグングン上昇する

 毎年ゴールデンウィークごろから盛んに報道される「車内熱中症」に関しても同様です。

 JAFが実施するユーザーテストでは、エアコンを停止して10分もしないうちに「厳重警戒レベル」となることがわかっています。

 体温調節機能が大人ほど発達していない子どもや、温度に対する感覚が鈍くなる高齢者では、もっと早い段階(7分から8分程度)で命の危険が迫ってきます。

 筆者も昨年実験をしてみましたが、外気温が40度近いときに、エアコンを切ってわずか数分で、日の当たるシートは60度に達しました。

 では「エアコンをつけて車内を涼しくしていれば大丈夫」と、子どもをエアコンのついた車内に残したままクルマから離れた場合、どんなことが起きるでしょうか。

 チャイルドシートで寝ていた子どもが目を覚ましたら、親を探すかもしれません。ほとんどのチャイルドシートはハーネス(シートベルト)が正しく締められておらずユルユルですので、子どもの小さな体はすき間をすり抜けてシートから降りようとします。

 回転式チャイルドシートなどの台座が高いタイプだと、転落する危険もあります。子どもの頭は重たく、比重も大きいので頭から床に落ちて大けがをすることも懸念されます。

 また、運転席に移って、ハンドルを握ったり、動かしたり、いろいろなスイッチ類をいじり始めたりするかもしれません。

 エアコンをつけているということは、一般的にはエンジンもかかっている状態でしょう。最近のクルマには、ボタンひとつでパーキングブレーキを解除できるものもあります。なにかのはずみでクルマが動き出すかもしれません。

 長時間アイドリング状態でかつエアコンONの場合、エアコンが効きづらくなることもあるでしょう。最悪のケースとして、ガソリンが無くなってしまうことも考えられ、エアコンが完全に止まった車内の温度は急上昇していきます。

 また子どもの車内放置は、外からドアが開く状態であれば誘拐や連れ去りのリスクがあります。なかから開く場合は、子どもがひとりで外に出てしまい、交通事故や転落などの危険に晒されることも考えられるでしょう。

 それでは、親はどう対応するのが良いのでしょうか。

 日々の買い物などで駐車するときは、短時間でも子どもをクルマから降ろして一緒に連れていくべきです。

「うちの子、お店の中を走り回るし、大声で騒ぐから…」と気にする人もいます。それでも、気にせず連れてきましょう。子どもの命の方が大切です。

 周囲の人々も、子どもが走り回って騒いでいたとしても、親がそれを注意しているなら、大目に見てあげてください。

【了】

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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