なぜ軽自動車の側面に溝が? 普通車に負けないデザインを実現する技術とは
近年は新車市場で軽自動車人気の高い状況が続いていますが、人気モデルのなかにはボディのタイヤ周辺に溝が掘られていることがあります。いったい、なんの目的で設けられているのでしょうか。
デザインも立派に! 軽自動車デザインの進化で生まれた「溝」
現在、国内の新車市場の約4割を占める軽自動車。人気が高いだけでなく、近年では走行安定性や安全性、さらにデザイン性までさまざまな部分のレベルが向上しています。
そんななか、軽自動車のデザインで多く見られるタイヤ周辺に円を描くように掘られている溝があります。なんの目的で溝はあるのでしょうか。
近年は、普通車のような外観の軽自動車が増えたように感じる人は少なくないと思います。
理由としては、軽自動車人気の高まりによって品質が全体的に向上したことだけではなく、全高が1700mmを超える「スーパーハイトワゴン」というジャンルの軽自動車が人気となったことが挙げられるでしょう。
ところで、軽自動車のボディのタイヤ周辺には、溝が掘られていることがあります。これは、クルマのデザイン上の目的で設けられているラインですが、いったいどのような意図で設けられるのでしょうか。
このラインが表現しているものは、「フェンダー」というボディの一部分です。本来は泥よけのために設けられます。
普通車のなかには、幅の太いタイヤを収める目的やクルマの安定感を演出する目的で、大型のフェンダーが採用されている場合がよく見られます。そのため大型フェンダーは、ある種「立派なクルマ」のシンボルともいえるのです。
趣味性の高いSUVやスポーツカーではとくにその傾向があります。
しかし大型フェンダーを軽自動車に採用しようとした場合、全幅1480mmという軽自動車規格の制限によって、軽自動車規格をオーバーしてしまいます。
そのため、「フェンダー風」デザインを採用するための方法として、溝(ライン)で表現するという方法が編み出されました。現在、軽自動車の多くのモデルでこのデザインが採用されています。
「フェンダー風」デザインが採用されたクルマと大型フェンダーが付いているクルマを比較すると、デザイナーのデザイン処理上のこだわりが感じられます。
もっともわかりやすい例としては、スズキの軽自動車「ジムニー」と同社の小型車「ジムニーシエラ」の比較が挙げられます。
ジムニーの全幅は1475mmで、ボディ側面が垂直なためボディ側面のラインでフェンダーが表現されています。一方ジムニーシエラは全幅が1645mmとなっており、樹脂製オーバーフェンダーが装着されていることが特徴です。
オーバーフェンダーは、ジムニーシエラの外観上のアイデンティティにもなっている訳ですが、一方ジムニーが「物足りない」デザインとなるのを防ぐために、フェンダー風のラインが大きな効果を発揮していることがわかります。
スズキのチーフエンジニア 米澤宏之氏は、ジムニーについて次のように説明しています。
「ジムニーは歴史があるクルマなので、デザインや走りなどに関して、それぞれの人がそれぞれのジムニーのイメージというのを持っています。それを精査して検討し、新型に反映させました。
一見するとヘリテージデザインに見えますが、決してそんなことはなく、ジムニーらしさを追求したら、こういうカタチになりました」
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サイズの違うクルマに同じ「ジムニーらしさ」を感じさせる外観を提供出来ている点が、デザインの妙といえるでしょう。
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