マツダ・スバルの“らしさ”残せるか トヨタとEV提携する両社の車作りの今後とは

トヨタは、電動車の販売拡大ペースを5年前倒しするという発表を2019年6月におこないました。また、EV開発にあたって他メーカーとの連携も進めるといいます。なぜ、トヨタは計画の前倒しを発表したのでしょうか。

ついにトヨタがEVに本気になった? 『5年前倒し』が意味することとは

 2019年6月7日、トヨタでパワートレイン開発の総指揮をする寺師茂樹副社長が『トヨタのチャレンジ EV普及を目指して』という記者会見を、お台場で開きました。発表のなかで最も注目されたのはEV普及計画の「5年前倒し」です。

 2017年にトヨタが発表した計画では、2030年に全世界でハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を年間450万台以上、またEVと燃料電池車を年間100万台以上販売する目標でした。それを一気に5年前倒しして、2025年の実現を目指すというのです。

 トヨタはなぜ、5年の前倒しを決めたのでしょうか。

トヨタが発表会で披露した電動コンセプトカー

 自動車産業界で5年といえば、ひとつの車種のモデルライフに匹敵します。つまり、EVを含む電動化の普及を1世代早めるという大決断です。しかも、当初の計画から2年しか経っていません。この2年の間に、トヨタになにがあったのでしょうか。

 キーポイントとなるのが中国政府の動きです。今回の発表でトヨタが示したグラフにあるように、グローバルでのEV需要は直近の2018年で121万台。このうちの約6割を中国が占めます。

 背景にあるのが、中国政府が2019年から実施している新エネルギー車規制法(NEV法)です。中国市場で一定以上の販売数がある自動車メーカーに対して、EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などの電動車の販売量が制定・義務化されました。

 これは、米カリフォルニア州が1990年から実施しているゼロ・エミッション・ヴィークル規制法(ZEV法)を参考にしたものです。ただし、けっして中国がパクったのではなく、両政府が協議した上で進めてきた話です。

 近年、欧州各国やインドでも「20xx年までに、ガソリン車・ディーゼル車の販売を取りやめる」という方針が示されていますが、それらは法的な拘束力がある政策ではありません。現時点で国をあげて電動車の販売台数を義務化しているのは、中国だけです。

 その中国政府に対して、トヨタは「ハイブリッド車もNEV法に組み込んで欲しい」と要望してきましたが、実現できず。一方で、フォルクスワーゲングループを筆頭としたドイツメーカー各社はNEV法を強く意識したEVシフト体制を敷きました。こうした一連の動きが2017年から2018年に起きたのです。

 そのため、トヨタとしては中国でのEV生産と販売を一気に強化するため、中国最大手のEV向け電池メーカーと契約するなど、事業方針の転換を迫られたといえます。

 いい換えると、トヨタを含めて大手自動車メーカーのEV戦略は中国第一主義であり、他の地域に対しては大きな販売量を狙わず、それぞれの市場の特性にあったEVを企画することになります。日本市場では高齢化社会を意識した『歩行領域EV』がそれにあたります。

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