マツダ・スバルの“らしさ”残せるか トヨタとEV提携する両社の車作りの今後とは

マツダ、スバル、さらにスズキの戦略はどうなる?

 こうしたトヨタEV戦略のなかで気になるのが、トヨタと資本関係、または技術提携の関係にあるダイハツや日野、マツダ、スバル、そしてスズキのEVです。

トヨタ 車両電動化への取り組み説明会の様子

 トヨタは2020年以降にグローバルで10車種以上のEVを投入しますが、そのほとんどで他メーカーと共同開発をおこないます。コンパクトカーでは、ダイハツおよびスズキと連携。スズキ向けではインド市場向けのスズキのEVが最重要視されています。

 日本市場では軽自動車との差別化が難しいこともあり、ダイハツのEVを含めて発売数は限定的になると予測されます。

 スバルについては、ミディアムSUVのEVを投入。こちらは米ZEV法を意識した北米市場向けです。

 マツダについてはまだ発表されていませんが、順当に考えると、コンパクトカーやミディアムSUVでのEV連携が妥当です。

 開発が少し遅れていると噂されている、ロータリーエンジンを発電機として使うレンジエクステンダー型EVについて、マツダがトヨタに供給する場合、コンパクトSUVなどが候補になるのではないでしょうか。

 こうしたEVなどの電動化技術について、トヨタは今年4月に特許の無償公開を発表しています。

 無償とはいえ、モーター、電池、インバーターなどの制御装置がデンソーなどのトヨタ関連企業から販売されることや、さらにコンサルティング料なども含めて「1社あたり数百億円単位の金額が動くと見込んでいる」(トヨタ幹部)といいます。

 つまり、トヨタにとってダイハツ、日野、スバル、マツダ、スズキは「いいお客さん」なのです。

 逆の見方をすれば、トヨタと連携する各メーカーにとっては「現状、電動化は中国市場が最優先で先行きが不透明。そのうえで新技術に先行投資するのはリスキーだ」と考えており、「トヨタとの共同開発は、とてもありがたい」という姿勢です。

 ただし、こうしたトヨタ主導型のEV開発が進むと、車体やパワートレインなどクルマの骨格がすべてトヨタに牛耳られてしまい、それぞれのメーカーの特色は外観と内装のデザインのみになってしまうことが危惧されます。

 とくに、マツダやスバルは、SKYACTIVや水平対向型エンジンなど独自技術が商品の特性です。トヨタEV戦略のなかで、マツダらしさ、スバルらしさをどのように保っていくのか。次世代のクルマ作りに関する課題は山積みです。

【了】

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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