マツダ初の直6とロータリー復活できる? 2030年度新燃費基準を控えて勝算あるのか
マツダの新パワートレーン戦略に弱点はあるか
2019年5月9日の決算発表会の席で、マツダの丸本社長は2020年に同社が創立100周年を迎えるにあたり、「いま、自動車業界は『100年に一度の変革期』を迎えています。この節目に経営のバトンを渡された者として、次の100年に向け、マツダを持続、発展させることが私の責任と考えています」とコメントしました。
その具体的なプランのひとつとして新パワートレーン戦略があり、直列6気筒のスカイアクティブ・ディーゼルエンジンとスカイアクティブXエンジンの採用と、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドを含む電動化など、パワートレインバリエーションの拡大を進めようとしています。
なかでもスカイアクティブXエンジンは、従来のガソリンエンジンのように点火プラグを利用して混合気(燃料を含んだ空気)に着火するのに加え、ディーゼルエンジンのように空気を圧縮して高い熱を発生させ、自然着火による燃焼方法の両方を備え、高効率化を目指します。
新型マツダ3の一部グレード(2019年10月発売予定)から搭載され、順次車種を拡大するとしています。
さらに、2018年には発電のみにロータリーエンジンを使用する電気自動車の開発も発表していますので、マツダの新パワートレーン戦略のバリエーションはじつに豊富といえますが、果たしてこの戦略は完璧なのでしょうか。
ひとつ懸念されるのは直列6気筒の新エンジンです。これは現行の「アテンザ」のような大型車に搭載を予定していると発表されました。
これまでマツダは直列6気筒エンジンを作ったことはなく、生産設備を新たに構築する必要があります。開発費も含めると数十億円単位の投資になるはずです。
また、直列6気筒エンジンはV型6気筒エンジンと比較してエンジン全長が長くなります。ウォーターポンプやエアコンのコンプレッサーなど補機類の電動化が進み、かつての直列6気筒エンジンよりは全長が短くできますが、依然としてV型6気筒エンジンの方が短いのは確かです。
全長が長いと横置きに搭載するのが困難で(ボルボが実現したものの、現在は廃止)、車種の拡充に不利になります。
通常は新型エンジンを作ると20年以上も基本設計を変えずに生産されることが珍しくなく、排気量も多くのバリエーションを展開し、FF、FRとさまざまな車種に搭載されます。そこまでしないと、投資分の回収に時間が掛かってしまうからです。
直列6気筒エンジンのメリットとしては振動が少なくスムーズに回転することで、高級車やスポーティカーにも適したエンジンといえますが、アテンザ級のクルマの販売台数を考慮すると、どのくらいの期間で投資分を回収できるかは、想像が難しいといえます。
さらに、今回の2030年度燃費基準はメーカー全体での燃費基準なので、いくら燃費のよいパワートレーンを作ったとしても、多くの車種に搭載しないとその効果は発揮できません。
つまり、莫大な投資をどこにつぎ込むなかで、メーカーの未来が左右されるということです。
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現在、クルマの開発においてシャシやエンジンの「アーキテクチャ化」が進み、基本的な設計を共有することができ、開発期間の短縮や生産のフレキシブル化が実現しました。
よって、以前よりも設備投資などの負担も軽減していますが、やはり完全な新型エンジンを作るのということは、長期的な展望が必要です。
マツダもそうした懸念材料があったとしても新規開発を決断したわけですから、勝算はあるはずです。
いずれにしても新型エンジンが出る機会は極端に少ないので、楽しみに待つこととしましょう。
【了】
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