トヨタはなぜレクサスを国内に? 北米向けブランドとして誕生した30年は攻守の歴史だった
レクサスブランドの誕生背景
1989年にトヨタがレクサスブランドを立ち上げた背景には、北米におけるトヨタブランドの限界がありました。トヨタを含めた日本車メーカーは、日本国内では1970年頃から幅広い車種を扱っていましたが、北米では事情が違います。
1973年に発生したオイルショックの影響によりガソリン価格が高騰して、アメリカ車の主力となる大排気量車が売れ行きを落とし、燃費の優れた日本車が注目されたからです。
従って、北米における日本車のセールスポイントは、価格と燃料代が安く、壊れにくいことでした。日本車は、信頼性は高くても実用車の代表なので、日本メーカーが高級車を用意してもブランドイメージに合いません。そこでプレミアムブランドのレクサスを展開しました。
レクサスブランドの立ち上げについて、レクサスの担当者は次のように話します。
「ブランドの立ち上げには、当時の北米における自動車販売店の事情も影響を与えました。北米の自動車販売店は、全般的にサービスの評判が悪かったです。
自動車販売店は、『歯医者と同じくらい嫌な場所』という例え話があったほどです。こういった事情もあり、レクサスは、車両の商品力に加えて、数年後に高値で売却できる、店舗が清潔で快適に過ごせる、点検や修理では車両を預かる期間を明確にして、それを遵守する、工賃を明朗にする、といったことに注意しました」
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店舗が清潔で、点検などの納期を守るのは、日本国内の販売店では当たり前です。しかし30年前の北米では、特別なことだったこともあり、プレミアムブランドのサービスとしてレクサスに盛り込まれました。
このように、レクサスブランドは海外市場を攻めるために誕生します。その後、輸入車人気の高まる日本市場にて、欧州ブランドへの対抗馬として、国内展開されるというビジネス背景をもったブランドだったのです。
【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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