平成の車史は安全の歴史 先進技術で交通事故ゼロへ向けた技術革新の時代

今や当たり前の安全装備「エアバッグ」

 シートベルトと並び、今では安全装備のデフォルトとなっているSRSエアバッグシステムが日本で初めて標準装備されたのも1989年(平成元年)、初代トヨタ「セルシオ」でした。

正面衝突だけでなく、今では側突などでも乗員を守ってくれるエアバッグ

 その後、助手席エアバッグ(1990年登場の2代目ホンダ「レジェンド」)、シートサイドに内蔵のサイドエアバッグ(1996年登場の3代目日産「シーマ」)、ルーフライニングに内蔵のカーテンシールドエアバッグ(1998年登場のトヨタ「プログレ」)。

 ほかにも、インパネ下部に内蔵のニーエアバッグ(2002年登場の3代目トヨタ「カルディナ」)、シートベルトエアバッグ(2010年登場のレクサス「LFA」)、歩行者保護エアバッグ(2016年5代目スバル「インプレッサ」)など、さまざまなタイプが登場しています。

 ただ、エアバッグはあくまでも補助拘束装置(SRS=Supplemental Restraint System)であり、シートベルトをした上で効果があるシステムであることを忘れてはいけません。

 ちなみにエアバッグは海外では義務化されている国もありますが、じつは日本では義務化はされていません。運転席/助手席エアバッグに関してはほぼ採用済みとなっていますが、サイドエアバッグに関してはまだオプション設定のモデルが多いのも事実です。しかし、前出の側面ポール衝突試験の実施により、今後は事実上義務化の流れになっています。

「事故を未然に防げ」普及した技術

 衝突安全ボディ、シートベルトの義務化、エアバッグの装着率アップにより、自動車乗車中の死亡事故は2001年以降一貫して減少していますが、近年では減少幅が縮小しているのも事実です。そこで注目されているのが、「事故を起こさないための技術」になります。研究・開発は以前から進められていましたものの、普及するようになったのは平成に入ってからです。

 その代表が急ブレーキ時でもタイヤのロックを防ぐABS(アンチロックブレーキシステム)でしょう。後輪のみは古くから採用例がありますが、4輪ABSとなると世界初採用は1978年に登場の初代メルセデス・ベンツ「Sクラス」へのオプション、日本初採用は1982年に登場の2代目ホンダ「プレリュード」へのオプション、標準装備は1983年登場の7代目トヨタ「クラウン」でした。

 初期のABSは、制御が荒く制動距離も伸びてしまうことから疑問視の声もありましたが、緻密な制御や車両状態を計測するセンサーの進化も相まって、今ではモータースポーツでも使えるレベルになっています。ABSの進化を支えたのはクルマと同じように平成に入って飛躍的に向上したコンピューター、つまり「制御技術」と「タイヤ」の進化になります。

 このABSと発進・加速時のタイヤの空転を防止させる、TCS(トラクションコントロール)を統合制御して車両姿勢の乱れを安定させる装置が車両挙動制御システムです。

 各メーカーによって名称は異なりますが、基本的な構造や効果はほぼ一緒になります。ブレーキ主要メーカー3社は一般名称として、ESC(Electric Stability Control)を提唱しています。

 世界初採用は、1995年に登場の3代目メルセデス・ベンツ「Sクラス」、日本初採用は1995年に登場のトヨタ「クラウンマジェスタ i-FOUR」でした。当初は『お仕置き制御』と呼ばれ不評でしたが、ABS同様システムの進化により、今では高性能モデルの中にはESC-ON時のほうがサーキットでのラップタイムが良いという事例もあるそうです。日本において、新型生産車は2012年(軽自動車は2014年)から、継続生産車は2014年(軽自動車は2018年)から装着が義務化されています。

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