平成の車史は安全の歴史 先進技術で交通事故ゼロへ向けた技術革新の時代

クルマは人によって運転され、使用されますが、避けて通ることができないのが『交通事故』です。自動車メーカーはさまざまな安全技術の開発を行なってきました。平成の時代に大きく向上してきた自動車と安全について紐解きます。

交通事故ゼロへ安全技術革新の競争

 クルマは人によって運転され、使用されますが、避けて通ることができないのが『交通事故』です。自動車メーカーは交通事故による死亡者や重傷者を無くすためにさまざまな安全技術の開発を行なってきました。平成の時代に大きく向上してきた自動車と安全について紐解きます。

歩行者にも感知し、万が一人が飛び出しても自動でブレーキをかけ衝突被害を軽減してくれる先進安全技術

 安全技術を大きく分けると、事故が起きてしまったときに人体の影響を最小限に抑えるパッシブセーフティ(受動的安全)と事故を未然に防ぐアクティブセーフティ(能動的安全)の二つに分かれます。

 パッシブセーフティで要となるのが自動車のボディです。かつては『全てが頑丈なのが安全』だといわれていましたが、1953年に登場したメルセデス・ベンツ「180シリーズ」は、キャビン部は強固、エンジン部&トランク部は潰れやすい『衝撃吸収構造』を世界初採用。これ以降、この構造はクルマ全体の基本技術として世界に広まります。日本車も以前から研究・開発を行なってきましたが、今ほど重要視されていなかったのも事実でした。

 しかし、その流れが大きく変わったのが1993年1月の『道路運送車両法の保安基準』の改定で、1994年4月以降の新型車には前面衝突試験が義務付けられたことです。これは、1980年代後半から1990年にかけてクルマの販売台数が大きく伸びた一方で、死亡事故も比例して増えたことに危惧した国が動いたのです。

 各自動車メーカーは、自動車の正面衝突に加えて、車体の一部分のみに負荷が加わり変形量が非常に大きいとされるオフセット衝突。さらには側面衝突における乗員保護性能と生存空間を確保する『衝突安全ボディ』を導入し、この開発のために解析技術も大きく向上したといわれています。

 ちなみに多くのモデルは、副次的効果として走行性能もレベルアップしており、国内自動車メーカーが『車体剛性』に注力するキッカケにもなりました。また、衝突安全基準は年々厳しくなっており、2018年6月15日以降に発売される新型車については、側面ポール衝突試験も導入されています。今後はさらなる衝突安全性能を確保するためにもクルマが大きくなるのはやむを得ないかもしれません。

100万人以上の命を救ったとされる「シートベルト」

 安全装備のなかで、基本中の基本となるのがシートベルトです。今でこそ装着が当たり前のシートベルトも、日本で一般道での前席シートベルトの着用が義務化されたのは1992年(平成4年)になってからです。

 黎明期は2点式が一般的でしたが、1959年にボルボが3点式シートベルトを発明し特許を取得。しかし『安全は独占されるべきではない』と特許を無償公開しました。以降、多くの自動車メーカーが採用し、世界中でこれまでに100万人以上の命を救ったそうです。

ボルボが特許を無料開放し、今でも安全装備の基本となっている3点式シートベルト

 年々進化を遂げ、急ブレーキや衝突などで急な動きのときはロックして乗員の体を固定する『緊急ロック式巻き取り装置(ELR)』は1987年に義務化。さらに衝突を検知した時点で強制的にシートベルトを巻き取る『プリテンショナー機構』は、1990年登場の初代「レジェンド」が国産車初採用しました。

 また、拘束力を一定レベルに保ちながらシートベルトを少しずつ緩めることで乗員の胸部に加わる衝撃を緩和させる『フォースリミッター機構』は1996年登場の8代目「マークII」三兄弟(チェイサー/クレスタ)が国産車初採用されています。

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